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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第五章 陽だまりの風がふく ~萌芽するしあわせ~
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第63話 ギルド

 パーティ翌日。現実世界の佳果と楓也は、引き続きめぐるの家でお世話になっている。三人は家政婦さんの作ってくれた朝食にありつきつつ、昨日の出来事について話していた。


「へえ、手紙か……それで感謝を伝えてくれるなんて、本当にいい子だね」


「そうなんだよ! うう、思い出してまた泣きそうになってきた」


「お前ちょっと涙もろすぎやしねーか?」


「あ~他人事みたいに! 阿岸君だって、昨日は貰った手紙見つめて何度もうるうるしてたじゃない!」


「え、佳果くんが……!?」


「だぁーっこの話は終わりだ! めぐる! バイトの方はどうだったんだよ?」


 彼は昨日、初出勤を終えたばかりだ。早朝に出かけて夜に帰ってきたようだったが、特に疲弊ひへいしている様子は見られない。


「えっと、うちの店って高級珍味とかをメインであつかってるんだ。単価が異様に高くて、客数が多くないところは助かってるんだけど……」


「だけど?」


「代わりに、来るお客さんがみんな少しずつ変なんだ。番組を降板した芸能人とか、山で暮らしてるっていう仙人みたいなおじいさんとか、自称やみの魔導師とか」


「なんかとんでもないお店だね……」


「とりあえず、まだ手探り状態って感じかな。店主が毎日来いって言ってるから、ひとまず今日もがんばってみるつもりだよ」


「そうか……心意気は立派だと思うが、あんま無理すんなよ?」


「ありがとう。でも暇な時間も多いし大丈夫。それにこれは内緒なんだけど……お客さんがお金くれることもあって、実はかなり時給がいいんだ。この分だと、早く目標額が貯まる可能性も出てきた」


「お客さんがお金をくれる……? 一体どうして?」


「うちの店、料理の提供と一緒に"お悩み相談"もやってるんだ。うまく相談に乗ってあげられると、お礼にチップを貰えることがあって」


「ほー、そんなこともやってんだな」


「うん。たとえば昨日は、音楽やってる三人組にグループ名を一緒に決めてくれと頼まれて――今日の夕方までに、いくつか候補を考えておくことになってる」


「なるほど……もし須藤君の考えた名前が採用されたら、チップが貰えるって感じか」


 こくりと頷くめぐる。


「んじゃあ、俺らもいま一緒に考えるか? 協力するぜ」


「ううん、これはやっぱり自分の力だけでやってみるよ。……あ、でも佳果くん達のパーティがどんな名前なのかは、参考までに聞いておきたいかな」


 不意の質問に佳果が詰まる。そういえば、今まで特にそうしたものを取り決めたことがなかった。受け答えに困っている彼を見て、めぐるは察する。


「あれ、もしかしてまだ……?」


「ああ……言われるまで気づかなかったが、考えたことなかったわ」


「アスターソウルはギルドがパーティ名の代わりになるんだけど、創設の申請を受け付けてくれる建物が次の町にあるから――機会がなかったのは実質仕様(しよう)だね。……そうだ、ちょうど良いタイミングだしこのあとにでも行ってみる?」


「そりゃあいい」


「ふふ、じゃあ今日は自分もお客さんのグループ名を頑張って決めてくるから、そっちもギルドの創設とネーミング、頑張ってきてね。帰ったらどういう名前になったか教えて」


 「おう」と答える佳果に、めぐるが微笑ほほえみかける。彼は手早く支度したくを済ませると、元気よくバイト先へ出かけていった。残る二人も後片付けをしたのち、定位置についてデバイスをかぶる。



「ギルドですか……確かにそろそろ、いい頃合いかもしれませんわね」


 今日は現実世界が祝日であるため、朝から全員が集合している。

 アーリアは佳果たちの話をきいて思案顔だ。


「楓也、ぎるどって何?」


「んーそうだなぁ。ぼくらみたいな家族を"ひとまとまり"として見てもらえるようになる制度のことだよ。名前も自分たちでつけられて、公的な活動の幅が広がるんだ」


「なんかそれ、すごく面白そうじゃんか! さっそく申請しに行こうぜ!」


「ん! わたしも賛成!」


「ならひとまず、次の町の"エレブナ"ってとこを目指すか」


「ええ! 名前は道中、みんなで考えましょう。……何がいいかしら。言うなればこれは、わたくしたち家族を表す大切な大切な名前……ああ、なんて悩ましい」


「かか、自由ってのは時折ときおり、不自由だから世話ねぇよな」


 こうして一行は、ああでもないこうでもないと言いながら旅を再開した。

お読みいただき、ありがとうございます。

筆者はどんなゲームでも身内だけの小規模ギルドしか入ったことがありません……。

大規模なギルドで精力的に活動している人ってすごいですよね。


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