第61話 パーティー
「ずるいよなぁ~~~」
昨晩の再会から半日。佳果たちはヴェリス発案のパーティーに招待され、現在アスター城内へ訪れている。せっかく開催するならたくさんの人に参加してもらったほうが楽しいプレゼントになるのでは、というフルーカの助言によって、会場には多くのプレイヤーとNPCが賑わっていた。
中にはアラギの闘技場ですっかり彼女のファンと化していた諸兄姉らの姿もあり、彼らにもてはやされるヴェリスを見つめて、シムルがぼやいている。
「急にあんな成長するなんて反則じゃん」
「ええ、いっそう可憐になりましたわ!」
「アーリアさんが用意してくれたドレスもよく似合ってます!」
「そ、そういう意味じゃなくてさぁ……」
「あきらめろシムル。こいつら、あいつのことになると正気を保てねーんだ」
「あらあら佳果さん。シムルくんとあなたもビシッときまってますわよ」
アーリアは合わせた両手を斜めにして、タキシードを身にまとった二人を褒める。シムルに関してはフォーマルな衣装に不慣れであるため若干着られてる感があるものの、その愛嬌と本人の凛々しさが調和していて、なかなかクールなあんばいだ。
「姉ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しいけど、やっぱりおれも早く成長したいよ~~~!」
「だがシムル、俺らだってお前と同じ歳の取りかたなんだぜ? あいつが飛び級するみたいに変わってるだけでさ」
「前の変化はエリアⅢのときだったよね。今回はⅥだから……三の倍数?」
「げっ! ってことはⅨに移動したらまた離されちゃうのか!?」
「あり得ない話ではありませんわね。でも見た目が変わったからといって、ヴェリスちゃんが違う子になるわけではありませんもの。あなたはあなたのペースで、これまで通りあの子を支えてあげればいいんですのよ?」
「……うう、わかった。善処する」
「あいつにも気にするなと言われたしな」と心のなかで折り合いをつけるシムル。彼は気を取り直すと、今日のパーティーの主目的である"感謝の表明"にうつった。
「そうだみんな。これあげるぜ」
シムルが取り出したのは、紫や青緑などの混じるオーロラのような石をあしらった装飾品だった。佳果はピアス、楓也はブレスレット、アーリアにはペンダントが手渡される。
「わあ、綺麗なアクセサリー! シムル、これって?」
「ラムスの特産鉱石、"フィラクタリウム"で作ったものさ。ヴェリスはみんなにお礼がしたくてこのパーティーを開いたわけだろ? ならおれもなんか用意するのが筋だろうと思って」
「ほほー、ずいぶん洒落が利いてるじゃねぇか」
「現実世界でいうとフローライトが近いかもしれませんわね。いくらでも眺めていられる奥深くて繊細な美しさ……シムルくん、どうもありがとうございます! わたくし一生大切にいたしますわ!」
「ま、またまた大げさだな姉ちゃんは……」
「かか、サンキューなシムル! ありがたく使わせてもらうぜ」
「本当にありがとう! えへへ、今日からずっとつけちゃお! これ用の専用衣装を新調しようかな……ん~わくわくしてきた!」
喜ぶ三人を見てなんだか照れくさくなったシムルは「おう」とだけ言い残し、料理の乗っているテーブルへと去っていった。
それからほどなくして、会場が急に暗くなる。すると壇上のほうへヴェリスが現れ、マイクの前へと立った。
「ん、なんだ? あいつライブでもおっ始めるつもりかよ」
「いや、手になにか持ってるような? あれは……」
「お手紙、でしょうか」
お読みいただきありがとうございます!
鉱石とか宝石ってなんか魅力がありますよね。
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