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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第四章 雷雨をこえて架かる虹 ~あまねく愛のまぼろし~
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第49話 超感覚

(キーパーソン……)


 遊園地で襲われた際、クイスの連中が同じことを言っていた。佳果はずっとその意味がわからないままでいたのだが、フルーカの言葉でようやくに落ちた気がした。


「待ってください、超感覚って一体……」


「俺が説明する。夕鈴あいつは、あるとき目覚めちまったんだ」


「目覚めた?」


「ああ。他人や動物、ひいては木とか風とか、あらゆるもんの心を自分も同じように感じとれるってちからにな」


「えっ! そんなの初めて聞いたよ」


「あいつ自身が隠してたから、俺も言わねぇことにしてたんだ。すまん」


「あ、ううん、そういうことなら……でもそれって現実世界の話だよね。もしかして押垂おしたりさんが学校に来なくなったのって?」


「そうだ。あいつは色んな感情がごちゃ混ぜになってる世界に疲弊ひへいして、外へ出られなくなっちまったのさ」


「……そんな事情があったなんて」


「フルーカ様。先ほど、ヴェリスちゃんが超感覚の片鱗を見せているとおっしゃいましたが?」


「ええ。ヴェリスちゃん、あなたは"きらきら"や"ウニョウニョ"と聞いて、ピンとくるものがあるのではないかしら」


「!」


「ふふ、思い当たる節があるようですね。その感覚を皆さんに説明できますか?」


「んと、アイとアーリアと、このおばあちゃんも……笑ったときに"きらきら"するの。"ウニョウニョ"の方はめったに見ないけど、集中してるとき? の佳果とかシムルから出てることがあるよ。闘技場でたたかったソティラもそうだったかな……あとね、よくないもの、こわいものは黒い"もやもや"と一緒のことが多いかも」


「……ヴェリス、それはいつから見えてたんだ?」


「わかんない、気づいたら見えてた。……ごめんね、みんな。わたしこれ、最初は普通の感覚だと思ってたんだ。でも、シムルと会ってから"違う"のかもって気づいて……そこからは、わざと内緒にしてたの。みんなと同じでいたかったから……」


 しゅんとするヴェリス。そんな彼女を見て、シムルも同じように落ち込む。

 決勝で戦ったとき、彼はヴェリスの瞳に何か得体の知れないものが映っていることに気づいていた。それを直感的にあやつって勝利をもぎとったシムルは、彼女が意図的に"天賦の才"を黙っていることもまた理解したのだ。


 みんなと同じでいたい――佳果たちが唯一無二の家族であるからこそ、ヴェリスは異質なものに蓋をしようとしたのだろう。だが同じであるためとはいえ、家族に隠し事をしたのもまた事実である。


「あのさ、おれもなんとなくわかってて隠してたんだ。だから、ヴェリスだけを責めないでやってくれよ」


「シムル……」


「あん? なに言ってんだよ、別に責めたりしねぇさ」


「そうですわ。二人とも、よく打ち明けてくださいました」


「このタイミングで言ってくれたから、今後の対策が立てやすくなったと思うよ。片鱗ってことは、ヴェリスの超感覚はまだ発展途上なんだろうけど……いずれは大変なちからになるみたいだし、みんなで協力してなんとかしていこうね!」


 笑う三人を見て、こどもたちの表情がぱあっと明るくなる。

 フルーカも嬉しそうにうなずいた。


「やはり、あなた方ならばこのゲームをクリアすることができるでしょう。私も全身全霊をってお導きいたします」


「へへっ、ありがとうな。絶対にクリアしてみせるから、ばあさんももう少しだけ待っててくれや」


「……ええ」


 夕鈴の生きている世界への移行――それはフルーカにとっても夢のような話だった。しかるに彼女の表情が一瞬くもった理由は、まだ誰も知らない。フルーカは迷いを断ち切るように、変わらぬ口調で続けた。


「もぷ太さんのおっしゃるとおり、超感覚とは適切にあつかわないと非常に危険なちからです。しかし逆にいえば、制御さえできれば大きなアドバンテージになるちからでもある……重複しますが、私たちは夕鈴ちゃんの超感覚がなければエピストロフにたどり着けませんでした」


「あの、フルーカさん。つまり押垂さんは、超感覚を制御できるようになっていたということですか?」


「はい。残念ながら現実世界では最期までうまくいかなかったようですが、ゲーム内では訓練して自在にコントロールできるようになっていました。そしてそのコントロール方法を編み出したのは、今では黒の情報屋と呼ばれるようになったあの人――波來ならい明虎あきとらさんです」


「え! それってあの時、おれに変な問答してきたあいつだよな!?」


「サブリナさん達にラムスの情報提供したのもあの人だったよね。……まさかフルーカさんの口から実名を聞くことになるなんて思わなかったですけど」


「ん? てかよ、あいつが編み出したって……まさか!」


「お察しのとおり、私がともに旅をしていた仲間は夕鈴ちゃんだけではありません。明虎さんと、あなた方がアイと呼んでいるあの子――チャロもパーティメンバーだったのです。私たちは以前、四人でアスターソウルを攻略していました」

謎だった二人の素性が少しだけ見えてきました。


※お読みいただき、ありがとうございます!

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