第48話 託されし
「ばあさんが、あいつの……!?」
「ええ。あの子との冒険の日々は、私にとってかけがえのない大切な思い出です」
懐かしむように微笑むフルーカ。
しかし彼女はゆっくりとうつむいて、徐々に悲しそうな顔になった。
「それをもう本人と語らうことはできないのだと思うたび……胸が張りさけそうになりますが」
「……その、フルーカさん。あなたは押垂さんが亡くなった理由について、何かご存知なのでしょうか?」
「……車にはねられたと伺いました。でも、もぷ太さんが聞きたいのはそういう意味ではなさそうですね」
真剣な表情で、こくりと楓也がうなずく。アイと最初に会った時もそうだったが、彼は夕鈴の話になると凄味を増すところがある。佳果はそれを横目に、アーリアの機微も感知した。彼女は一見いつもと変わらぬ様子だが、どこか落ち着き過ぎているような印象を受ける。
(二人とも、昨晩なんかあったみたいだな。……まあいいけどよ)
佳果が人知れず直感をはたらかせるなか、フルーカが一呼吸おいて続けた。
「申し訳ございませんが、あの子がいなくなってしまった背景を、私からお伝えすることはできないのです」
「やっぱりそうなんですね」
「ただ、私があのとき太陽の雫をお渡ししたのは佳果さんだからこそです。……今はこれが精一杯でしょうか」
「……わかりました。それで、あなたは押垂さんのベラーターとして彼女と旅をし、最終的に女王という立場になられたということですよね?」
「おっしゃるとおりです。私が女王に至ったのは、かの時空魔法――"エピストロフ"へたどり着いたことがきっかけでした」
「エ、エピストロフ!? それってアイが最初に言ってた時空魔法じゃねぇか!」
「フルーカ様。するとお二人は一度、ゲームをクリアされているんですの?」
「いいえ。私たちは条件を満たすだけに終わり、結局クリアできずに離れ離れになってしまいました……そして、私がこの立場についた理由もそこにあります」
「とおっしゃいますと……?」
「私たちは失敗した。でも、だからこそ――きたるパーティを導くことはできる。今日あなた方をお呼びしたのは、まさにそのためなのです」
フルーカがバッジのようなものを取り出す。
「あっ! 女王様、そのカッコイイのなに!?」
「これはね、王たる権限をもつ者が、国に多大な貢献をした者にのみ授与することのできる"アスター王国の勲章"です。ヴェリスちゃんかシムルくんが装備していれば、現実世界にいる佳果さんたちと連絡をとることができるようになります」
(! 佳果たちと……!)
「加えて、今からお伝えすることを参考に……あなた方は今後もエリア移動を目指してください」
「勲章以外にも、なんかあるのか?」
「ええ。私たちがエピストロフにたどり着けたのは、彼女の持つ超感覚があったからこそ。すでにその片鱗を見せているヴェリスちゃんは、今後の攻略に関して重要なキーパーソンとなります」
あけましておめでとうございます!
もう令和五年なんですね……。
今年もよろしくお願いいたします。