第47話 フルーカ
「佳果さん、もしかして面識がおありで?」
「ほら、チュートリアルの時ばあさんに会った話、前にしたろ? 鐘塔のところでよ」
「えっ! 阿岸君に太陽の雫を渡したおばあさんって……女王様だったの!?」
「おいおい、なんの話だ? おれを置いてけぼりにすんなよなぁ」
(あのきれいな石、この人が持っていたんだ……)
それぞれのリアクションを見て、サブリナは何かを察したように言った。
「それでは女王陛下。我々は席を外しますね」
「あらあら、お気遣いありがとう。あとで、一緒にお茶でも飲みましょうね」
「はっ、ありがたき幸せに存じます」
笑顔で下がってゆくサブリナ。フルーカは玉座から立ち上がって窓際に行くと、大きなバルコニーへと続く扉を開けた。美しい白銀のテーブルに、人数分の椅子が用意されている。日の光に照らされて輝く空間をバックに、フルーカが微笑んだ。
「ここではのびのびとお話しできませんから、どうぞこちらへ」
◇
「わあ、これ美味しい」
ご満悦の表情で、ヴェリスがテーブルに乗っていた高級そうな菓子を食べている。
「お前なぁ、こういう時は遠慮するもんなんだぜ?」
「なんで? というか、シムルも食べてるじゃん」
「うっ、これはその……こんなうまそうなもの、食べないほうが失礼かなって思っただけだよ!」
「ふふふ、二人とも好きなだけ食べてちょうだいね。飲み物もありますから」
「わーい」「あ、ありがとうございます」
邪気のないやり取りを聞いて、一気に緊張がほぐれる。フルーカが「無礼講だと思ってどうか気楽に」と言ってくれたこともあり、佳果たちはいつもの口調とテンションで、順を追って話を聞いていくことにした。
「んで、結局ばあさんもプレイヤーなのか?」
「ええ。このゲームは若い人が多いですから、ちょっと珍しいかもしれませんが」
「プレイヤーが一国の女王ですか……普通、そういった立場にはNPCが配置されるものだと思うんですが、フルーカさんは一体どのような経緯で女王に?」
「それを語るには、ちょっとだけ過去をふり返る必要がありますね――そう、私と夕鈴ちゃんが歩んできた旅路について」
「!?」
「私は、夕鈴ちゃんのベラーターをしておりました」
お読みいただき、ありがとうございます!
年の瀬・多忙ということで過去一の短さです(すみません)。
明日は更新できるかわかりませんが、執筆時間自体は確保する予定です。