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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第三章 円をえがく道 ~負けられぬ理由~
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第30話 咲き乱れし

 一旦レベリングを保留にして闘技場へ足を運んだ四人。

 内部は活気があり、多くの者がごった返している。


「この闘技場ではすべてがフラット(・・・・)の状態で試合をするんですの。勝ち進むほど賞金が上がりますが、よい試合をした人は観客からチップをいただけることもありますわ」


「ほほー」


「ふらっと……って?」


「レベルや装備による能力値の補正がとり払われるんだ。試合中はスキルと魔法、武器の使用も禁止だね」


「つまりあれか、参加者は全員レベル1の感覚でやり合うわけか?」


「そのとおりです。その人の魂によって得手えて不得手ふえては異なりますが、だからこそ張り合いが生まれるわけですわね」


「柔軟な思考と純粋な戦闘センスが問われるから、結構楽しいよ。ある種、スポーツみたいな人気コンテンツだね」


「なるほど。試合中のダメージはどうなるんだ?」


「試合中に痛覚は働きませんから、そこはご安心ください。攻撃が当たれば体力がけずれて、0になったら終了です」


「安全かつシンプルなルールか。なら、確かにお前でもワンチャンありそうだな」


「うん、わたしやってみたい!」


 ヴェリスはまだ小さいにもかかわらず、戦闘において物怖ものおじしないというアドバンテージを持っている。これは固有スキルがなくとも、気構えという前哨戦ぜんしょうせんの段階ですでに優位性があるとも言い換えられる。相手を傷つけるわけではなく、競い合うという大前提も、心おきなく立ち回れる理由になるだろう。


 早速エントリーを済ませたヴェリスは、すぐにマッチングが成立し、トントン拍子で第一試合にのぞんだ。佳果たちは観客席からその様子を見守っている。


 彼女が入場してくると、周囲でどよめきが起こった。なにせ、子どものプレイヤーなど前代未聞。外見はアーリアのプレゼントしたかわいい服を着たままであるため、「謎の美少女が出てきたぞ~!」と叫んでいるおっさんもいれば、「きゃーお人形さんみたい!!」と両頬りょうほほを押さえている婦人もいる。


「ヴェリスちゃん、大人気ですわね!」


「ちと目立ちすぎじゃねーか?」


「うん、鼻が高いよ!」


「お前、本格的に子煩悩こぼんのうになってきてんな……」


 もうクイスのような存在はいないと思われるが、佳果は警戒をおこたらないように努めた。

 相手選手はガタイのいい若い男で、やはり彼女の登場におどろいている。


「じょ、嬢ちゃん。いくら痛くないとはいえよ、こりゃ大人が本気でやる模擬戦なんだぜ? 悪いことは言わねぇから棄権きけんして――」


「わたし、大人だもん」


 腰に手を当てて胸を張る彼女に、男はがっくし肩を落とした。

 しぶしぶ位置についたところで、まもなく試合開始のゴングが鳴る。


「これじゃこっちが悪者みてぇじゃん……でも、遠慮はしてやれんからな!」


「おう、どーんとこい」


「へっ、意気やよしってか! そらぁ!」


 渾身こんしんの回し蹴りがヴェリスの腹部へ向かって飛んでくる。それをひょいとかわした彼女は、空振りした足をゲシとはたき落とした。


「がっ!? 嬢ちゃんやるなぁ」


「へへ」


 照れるヴェリスを見て、会場がよりいっそう盛り上がっている。

 案外、平和な連中がつどっているのかもしれない。


「アーリアさん、今のって」


「ヴェリスちゃんの初期ステータスで一番高かった数値は、やはりAGIでした。敏捷性には瞬発力も含まれますから……お相手の反応速度をみる限り、これは相性がいいかもしれませんわ」


「ヴェリスー! がんばれー!」


 声援を受けて気持ちが高まった彼女は、ぐっとファイティングポーズをとって走り出した。初速がよかったこともあり、男は繰り出されたパンチをよけきれずにバランスを崩す。

 そこからの展開は早かった。後ろに回り込んだヴェリスの連打で、男の体力はみるみるうちに減ってゆく。こうして第一試合をなんなく突破した彼女は、勝利のガッツポーズを決めた。白熱した闘技場から、うなるような歓声があがっている。

お読みいただきありがとうございます。

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