表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
308/356

第300話 片羽

「ぬ、あそこじゃな!」


「お~やっとこさ到着かぁ!」


「やりましたね、みなさん!」


 いただきほどちかい岩石地帯。ようやく見えてきた目的の洞穴どうけつに、ガウラたちのテンションが上がってゆく。

 ノーストによれば、あの中から青生生魂(アポイタカラ)の気配が感じられるそうだ。それは同素材から作られているという魔剣『ドゥシュタ・ニル・ガマナ』をゆうする彼にしかわからぬ感覚なのだが――全幅ぜんぷくの信頼を寄せている三人は、「とうとう見つけてやったぞ」とすでに手中しゅちゅうおさめたと言わんばかりに歓喜かんきしている。


「……やれ、そうはやるものではない。ぬか喜びに終わったとしてもわれは責任を取らぬぞ」


「またまたぁ! ノスっちに限って見当違いってこともないだろ? てなわけで、おれっちは一番乗りで"ガチ喜び"をつかませてもらうとするぜ!」


「ああっ! ずるいですよトレチェイスさん!」


「わしも早く見たいぞい!」


 スタコラサッサと抜け駆けするトレチェイスのあとを、ガウラと昌弥まさやが全力疾走で追いかけてゆく。その迂闊うかつな行動に待ったをかけようと宙に手を伸ばすノーストであったが、これまで散々(さんざん)難路なんろを越えてきた彼らの気持ちがわからぬわけでもない。


「まったく、仕方しかたのない奴らめ」


 そうつぶやいたノーストは転移魔法を使い、結局(だれ)よりも先に洞穴内へ到着する。突如として出現した彼の背中にドンと顔をぶつけ、「そ、そりゃないぜノスっち……」とトレチェイスが涙目を浮かべるいっぽう。両脇に立った他の二人は少し先のほうに、地面からえるように隆起りゅうきしている不可思議な結晶を捉えていた。


「ほう! 想像以上に美しいのう……吸い込まれるような水色じゃ」


「銀の粒子りゅうしが立ち昇っているのも幻想的で綺麗ですね。……ん? でもあの結晶、なんだか陽炎かげろうみたいに揺れている気が……輪郭りんかくがあやふやといいますか……」


「とりあえず、もっと近くで見てみようぜ!」


 今度は同じ歩幅とペースで、ゆっくりと青生生魂に近づいてゆく三人。殿しんがりつとめるノーストは、彼らのうしろ姿を見守りつつ思案した。


(物質としての状態は、法界ほっかい箱舟はこぶねをつくった際に楓也が入手してきた"夜の水月"と似ているな。ディメンションアイテムというやつか……ならば例に漏れず、何らかのセキュリティ(・・・・・・)が働くものと考えてしかるべきだろう)


 先刻の失敗が記憶に新しい手前、極限まで感覚を研ぎ澄ませ、警戒を強めるノースト。すると果たして、青生生魂のゆらめきが人影ひとかげかたどりはじめた。彼がすぐに「下がれ!」と先頭へ出て臨戦態勢を取ると、にわかに緊張きんちょうが走る。


「!? これはもしや……RPGのお約束、たからの守護者が出てきて一戦まじえる流れかのう!」


(……不穏ふおんな状況なのに、楽しそうだなぁガウラさん)


「でもそれにしちゃ、微塵みじん毒気どくけを感じないぜ?」


「――なにやつ。すみやかに正体をあらわせ」


 ノーストがすごむと、人影は一気に鮮明となった。現れたのは着物きものをまとった美しい人物。黄金こがねいろのミディアムヘアを後ろでってハーフアップにしており、女性のようだが青年にも見える、眉目びもく秀麗しゅうれいの容姿である。そのたたずまいに、各々(おのおの)が反応を示した。


「! うぬは……!」


「? ノースト殿、顔見知りかのう?」


(あの雰囲気……もしかして、前に里長さとおさが言っていた……!?)


(んん~? どっかで見たことあるような、ないような……この頭んなかがかすみががってピリピリする感じ、やっぱり"昔のおれっち"がらみなのかねぇ)


 四人の表情をそれぞれ見渡した相手あいてかたは、ふっと表情をやわらげて言った。


「やあ、ノーストにトレチェイスも久しぶりだね。あとの二人は初めましてかな? ……こんにちは、私はこの地で賢者と呼ばれている存在の片羽かたは。きみたちの来訪らいほう、心から歓迎かんげいさせてもらうよ」

アスターソウルもついに300話に突入しました!

カクヨムや某所を含め、長らく応援いただいている読者の皆様へ

厚くお礼を申し上げます。本当にありがとうございます!

今後も完結に向けて、ゆるりと頑張ってまいります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ