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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第297話 バロメーター

「うおぉ、なんでぇこの四角いのは!?」


「ステータス画面だね。 ……なるほど。おじさん的にはこれ、初見しょけんなんだ?」


「あ、ああ……だがその口ぶりじゃ、不思議ちゃんは違うみてぇだな。さしずめプレイヤー用の代物しろものってところかい」


「たぶん? ただおじさんのは空欄ばっかでちょっと変かも。ほら、わたしのと見比べてみるとさ――」


 小難しい顔をして、それぞれの画面を吟味ぎんみする二人。どうやらプレイヤーとNPC間では、パーティを組まずとも互いにステータス情報を共有できるらしい。うなる彼らに、チャロが付け加える。


「お察しのとおり、NPCは本来その画面を見ることができません。しかし今のおじさんみたく、プレイヤーの存在を認知した上でせいの目的を見極め、先に進まんとする魂に限っては、局所的な閲覧権限が発生するのです。おそらく今はSSの項目だけ表示されているかと存じますが、いかがでしょう?」


「おう、《SS-0(F)》って書いてあるぜ」


「ゼロとエフ……ん~、どっちも知らないあたいだなあ。といってもわたしの見識けんしきなんて元々(もともと)あってないようなものだし、全然当てにならないけどね」


 後頭部をいてペロっと笑うと、ソティラは「で、チャロさん。これって結局なんなの?」と改めてたずねた。彼女は右手の人差し指を立て、おだやかに答える。


「魂の情報を可視化したものですね。プレイヤーの場合、ハイフンの後ろには本人の情況に応じたⅠからⅩの数字が入りますが……0はそのどこにも属さないエリア、すなわちNPCを指しています。右側の括弧かっこ内につきましては、先ほど申し上げたグナの総量を表しており、プレイヤーは基本EからA。そしてNPCはFが入る仕様です」


「へぇ~~初耳はつみみぃ!」「そういう具合かぁ」


(……)


 目からウロコの解説におじさんたちが関心を示している横で、ヴェリスは自分のSS項目にある*を再確認し、自分たちが"基本"ではなく"例外"にある自覚を強めていた。陽だまりの風は現在、佳果を筆頭に全員(ぜんいん)がこの星印を有している。チャロいわく神気を顕在化している状態を意味するとのことであったが――元のアルファベットが消えているあたり、グナの計算方法が変化しているのかもしれない。


「ちなみにですが。Fの最下部に、横線おうせんがうっすら浮かび上がってきていませんか?」


「……確かにあるな。こいつは?」


「それはあなたの進捗しんちょく呼応こおうして徐々に濃くなってゆく、わばグナのバロメーターです。やがてEの文字が完成したとき、あなたは晴れて冥界入りの資格を得る。つまり今後は、ゴールまでの距離を目算することが可能になったわけです」


「ほう! そう言われるとなんだか俄然(がぜん)、張り合いが生まれる気がすんなぁ! ……ガッハハ、さっきは"真実"ってヤツについ打ちのめされちまったけどよ。これなら悶々(もんもん)とした日々ともおさらばできそうだぜ。いろいろ教えてくれてありがとな、べっぴんさん」


「ふふ、どういたしまして」


「嬢ちゃんも心の底から感謝してるぜ! ここへ招待してくれなかったら、俺はずっとくすぶったままだったに違いねぇからな」


 屈託のないトーンで礼を述べるおじさん。ところが意にはんして、ヴェリスの表情はうれいを帯びていた。


「……ううん。わたしはたものを伝えただけ。チャロが助けに入ってくれなかったら、きっとおじさんを傷つけて……失敗してたと思う」


「んん? おいおい嬢ちゃん、仮にそうだったとしても、だからこその"予行練習"ってなもんだろ? こうしておれはすこぶる満足してんだしよ、どうかそんな顔しねぇでおくんな。せっかくの美人が台無しだぜ」


「そうだよヴェリスさん! それに、これでもう鑑定の要領はバッチリつかめたんじゃない? ね、チャロさん」


「ええ。先ほどお話しした内容さえ頭に入っていれば、あとは一人でも立派にやっていけるでしょう。……あなたの鑑定眼は本物です。だからどうか自信を持ってください。あなたの言葉を待っている、まだ見ぬ人々たちのためにも」


「…………ん、わかった。ありがとうみんな。大好き」



 その後。

 鑑定はソティラの番を迎えたが、彼女はおじさんの結果を踏まえ、「ごめんなさい。実は今、"まだその時じゃない"って気がしててね」と言い、辞退じたいする運びとなった。なんでもヴェリスに敗北したあの日から、自分なりに追い続けてきた"答え"がもう少しで見つけられそうなのだとか。いささか心残りではあったが、彼女の意志を尊重したヴェリスは大きくうなずき、おじさんにのみ手紙を渡して二人を宿に帰したところである。


「お疲れ様でしたヴェリスさん。もうよい時刻ですし、今日はお休みになられては?」


「そだね。……あれ? そういえばチャロ、隣の部屋で何をしていたの?」


「ああ。いつぞやと同じく、モニタリングですよ」


 そう言って、彼女は空間に映像を投影する。そこには幻の金属を求め、魔境を探索するガウラたちの姿があった。

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