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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第294話 繋がり

「お粗末そまつさまでした」


 村人たちの厚意によって野外やがいもよおされた、ソティラとおじさんを歓迎する夜宴やえんからになった食器をさげに来たナノが、彼らの健啖けんたんな食べっぷりを見て嬉しそうに微笑ほほえんでいる。すっかり満腹になった二人は「とんでもないです、美味しすぎてほっぺたが落ちました!」、「いやいやこんなご馳走ちそう今まで食べたことねぇぜ!?」と口々に彼女の料理をたたえた。その横で、ヴェリスもうんうんとうなずく。


「ナノの料理、しあわせの味がするよね! わたしも大好き」


「まあ嬉しい! ……ふふ、皆さんの口に合ってよかったです。次もまた、腕にりをかけて作りますね」


 そう言って近くの洗い場へ向かうナノ。すぐに夫のゼイアが駆け寄り、二人で楽しそうに後片付けを開始した。なかむつまじい様子に、おじさんは羨望せんぼうの眼差しを向ける。


「なんてまぶしい夫婦なんだ……そういやさっき小耳に挟んだが、あのシムル(坊主)や佳果って兄ちゃんの親御おやごさんなんだって?」


「そだよ」


「か~、まったく世のなか捨てたもんじゃねぇぜ、こんな素敵な家族がいるんだからよぉ! ……もちろん、嬢ちゃんたち陽だまりの風も含めてな!」


「えへへ、ありがとう! でも、わたしたちにとってはおじさんとソティラも――世界中のみんなが、大切な家族なんだ。……あ、会見の時も同じこと言ったっけ」


 頭をかいて、ヴェリスがにんまりする。

 まだシムルと出会ったばかりの頃、『自分の心にいてくれる人たちのこと』を家族と呼ぶ、と彼から教わった。今ならあの言葉が、血のつながりの先にある魂の繋がりを――個という垣根かきねの向こうに広がる、このあたたかな感覚を指していたのだとはっきり理解できる。なぜなら"きらきら"の根源たる世界の光において、すべての心はひとつであると彼女はっているから。


(……ちょこっとだけ、あこがれちゃうけどね。血の繋がりにも)


 この場にいない兄弟の絆をとうとび、夜空を見上げて目を細めるヴェリス。つゆ知らず、「そうか、俺も家族かぁ! ガハハ、なんかさらに良い気分になってきたぜ!」と追加で酒をあおるおじさんをよそに、ソティラはいつになく思考をめぐらせる。


(現実世界で亡くなったご両親が、隠しエリアのNPCとしてアスターソウルに……か。弟くんやヴェリスさんに至っては少し前まで幼い少年少女だったのに、今や立派な紳士淑女(しゅくじょ)になってるようだし……半分プレイヤー化してるってところも気になるよね。うーん、これまで身体を動かすことにしか興味なかったけど、やっぱり難しいことにも触れていかないと、これ以上は強くなれないのかなあ)



 宴が終わり、夜更け過ぎのラムス。ヴェリスが住んでいるという仮宿かりやどに招待された二人は、テーブル越しに彼女からとある提案を受けていた。


「魂の鑑定……? たしか魔除けの頒布はんぷが完了したら始める予定だって言ってた、お悩み相談のことだよな?」


「それを、わたしたちにやってくれるの?」


「ん! 昼間のお礼と予行練習もかねて、ぜひソティラたちに最初のお客さんになってほしいの。もちろん無償むしょうだよ」


「うぉっしゃ、やったぜぇ! なあ不思議ちゃん、俺が先でもいいか!?」


「しょうがないな~。じゃ、ここは年長者にゆずるとしましょう(ダメって言ってもゴネそうだしね)」


「ガハハ、すまねぇな! ってなわけで嬢ちゃん、さっそく頼む!」


「おっけー。始めるよ」


 すると次の瞬間、ヴェリスのまとう雰囲気が急変し、瞳が宇宙に染まった。この光景にソティラはデジャブをおぼえる。かつて闘技場で彼女に敗北した際に味わった、あの全てを見透かされるような眼差し――それをさらに洗練したかのような"何か"を感じさせる明鏡止水の色が、おじさんの魂の深淵しんえんを映し出してゆく。

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