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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第293話 使命

 その後、一服いっぷくした佳果たちは今後の方針を話し合う運びとなった。


「で、零子や。今回の件――あんたの目にはどう映った?」


「そうですね……魔神ましんがらみの霊道が、あそこまでいびつで危険なものだとは思いませんでした。一般的な霊障れいしょうとは規模も全然違いますし、セオリーが通じないといいましょうか。正直、師匠や佳果さんがいなかったら丸く収められた自信がありません……」


「冷静に俯瞰ふかんできてるようで重畳ちょうじょう。でもね、残酷ざんこくなことに、世の中にはああいう場所が他にもたくさん存在している。犬っころ達の事件が起きた町も例外じゃないだろう。……あたしたちは霊能者として、そうした不幸の蔓延まんえんに少しでも歯止めをかけていかなきゃならないんだよ」


 正座した膝元ひざもと湯呑ゆのみをおろし、しみじみとなんぎょうぎょうの使命を語る岬季。責任の重さを痛感した零子は、真剣な顔で決意を示した。


「師匠があたしを呼んだのは、それを伝えるためでもあったんですね。……わかりました。あたしとて霊能者のはしくれ、ここで引き下がるわけにはまいりません。北海道へ向かうまでの期間は、ぜひともこの東京周辺で浄化を手伝わせてください。実地じっちでもっと腕をみがいて、いずれはひとりでも仕事がこなせるようになってみせます!」


「……ふふ、よく言った。それでこそあたしの一番弟子さ。じゃ、今後は霊道の探知を任せたいんだが、構わないかい? あたしは守護神様の斥力せきりょくがある関係で、良くないエネルギーに意識を合わせるのだけは苦手でねぇ……けどそういうのに影響を受けない"占術"ってやつを使えるあんたなら、お茶の子さいさいだろう?」


「! ええ、もちろんです!」


 かつて昌弥まさやに辿り着きたい一心で、岬季に師事するかたわら自主的に会得えとくした"占術"。古今ここん東西とうざいを問わず、様々な手法や考え方を柔軟に取り入れて独自(どくじ)昇華しょうかさせたそれは、何事なにごとにおいても強力な指針となりる零子の特技であった。


 そしてその特技は彼女自身の霊能力を掛け合わせることでシナジーが生まれ、とりわけ霊道の探知などに関しては、師匠をも超える精度の高い霊視を可能とするのだ。――あんにアイデンティティーを評価してもらった零子は、とても嬉しそうに胸を張った。隣で問答もんどうを聞いていた佳果も、自分のことのように喜んでいる。


「……へへっ。零子さんにとっちゃそれが"自分を活かす方法"ってわけか。こりゃ俺も負けてらんねぇな」


「坊やのほうは、どこまでが零気で対処できる範疇はんちゅうなのか、より明確になったろ? その線引きの感覚を、今後のボランティア活動に役立やくだてるといいさね」


「ああ、おおいに参考にさせてもらうぜ。……うし。んじゃ俺はそろそろ、明虎あきとらに事情を説明してくっかな」


「そちらはよろしくお願いしますね、佳果さん! あ、そうそう。もし桐彦きりひこさんたちの故郷が特定できた際は、随時ご連絡させていただきますので!」


『承知した。手間をかけるな』『頼んだぞ、人間よ』


 佳果の横でうなずく桐彦と福丸。両者は長らくの地縛がわざわいし、これまでどこを彷徨さまよってきたのか、自分たちがどこに住んでいたのかを忘却ぼうきゃくしてしまったらしい。加えて西沖会の残党は自分たちに関する情報の流出を徹底的に阻止しているようで、まずはそのあたりを洗ってゆかねば痕跡こんせきを辿るのが困難な状況にあった。

 ――彼らの命運は、零子の占術にゆだねられたといえよう。



 一方いっぽう、こちらはアスターソウルのラムス近辺きんぺん。かつて闘技場でヴェリスと縁のあったソティラとおじさんの二人は、昼間の会見終了時に彼女から受け取った座標と道順の書かれた紙を頼りに、今まさに村へ向かっている最中だった。険しい山を越えると、暗闇のなかに人里の明かりが見えてくる。


「なんじゃこりゃ。急に空がまっくらに……お天道様はどこいっちまったんだ?」


「えっ? ああそっか。おじさんはNPCだから夜を知らないんだね」


「え、えぬぴーしー? よる? ……あんたもたいがい不思議ちゃんだよなぁ」


「あっはは、それほどでも」


 適当な会話を繰り広げる年の差コンビ。すると不意に、遠くからタタタと聞き覚えのある足音がやってきた。果たして、予想にたがわぬ姿が登場する。


「いらっしゃい!」


「わ、ヴェリスさん!」


「おお、わざわざ迎えに来てくれたのかよ嬢ちゃん!?」


「うん! みんな二人と会えるのを楽しみにしてるよ! はやくいこっ♪」

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