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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第292話 霊感

 当初の目的であった土地祈祷の前段階として、霊道の浄化を終えた三名。現在、佳果と零子は囲炉裏いろりを囲み、だんを取りながら焼きいも頬張ほおばっている。台所のほうで岬季が煎茶をれるなか、二人はゆるんだ顔でくつろいだ。


「は~美味おいしぃ~! あったまるぅ~~!」


「ああ。色々と冷え切ってた分、染みるぜ……」


「ホントですねぇ! ……んん? ……ふんふん」


「? 急にどうしたよ、零子さん」


「え? あっ、福丸ふくまるくんがこのお芋いい匂いだなーって。桐彦きりひこさんもお茶の香りが懐かしくて、久しぶりに飲みたくなってきたんですって」


「……そういうことか。やっぱ聞こえねぇ(・・・・・)の、ちと不便だな」


 霊感のない佳果は、零気を伴わぬ状態で彼らの声を受信することができない。かといって常に奥義(ゾーン)を保つのは困難であり、また度を越えて神気廻心(えしん)を維持しようものなら、反動で昏睡こんすいしてしまうリスクが発生する。――意思疎通に関しては、今後もこうして霊能者を介するのが賢明といえるだろう。


「ま、こいつのおかげでるだけなら何とかなりそうだが」


「わぁ! 意外とインテリも似合うんですね、佳果さん!」


 「意外は余計だ」と相槌あいづちを打って、先ほど岬季からもらった片眼鏡(モノクル)を掛けてみせる佳果。瞬間、各部屋を壁抜けしたりして、物見ものみ遊山ゆさんする桐彦らの姿が確認できた。どうやら佳果の魂を中心として、短い半径以内であれば自由に動けるらしい。ただ例の"開かずの"方面は、波動の相性あいしょうが悪いのか露骨ろこつけている様子だ。


「……なんつーか、ねぇのにそこにるって不思議な感覚だわ」


「あたし達からすれば、その感覚が無いほうが不思議なんだけどねぇ」


 横から岬季が熱い湯呑ゆのみを手渡してくる。彼女はずずと自分の分をすすり、袋()しに煎餅(せんべい)を割りながら続けた。


「もっとも、別にったところでほこれるようなものでもなし。あんた、下手へたに開発しようなんて考えるんじゃないよ?」


「そこはじっちゃんにも『才能はない』ってばっさり切られちまったし、あきらめてるから安心してくれ。……ったく、シムルのやつはめちゃくちゃ霊感が強ぇって話なのに、兄貴がこれじゃ不甲斐ふがいねぇよな」


「うーん、こればかりは遺伝いでんするものでもありませんから、仕方がないですよ。それに佳果さんは他の才能に恵まれまくっているじゃないですか。あたしなんて――」


「…………」


 二人の会話を聞いて、岬季が神妙な面持おももちになる。シムルという少年の魂が佳果の弟、阿岸あぎし和歩かずほに当たることは既に彼女も把握しているところだ。同時に、幼くしてくなった彼の死因とされていた"医療ミス"。その裏側で、とある実験がおこなわれていた事実も。


(新薬、か……。……ろくでもないよ、本当に)

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