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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第289話 火の粉

 たとえ直接的な浄化ができずとも、己の在りかたを示すことで二人との対話にぎ着けた佳果。一時はどうなることかと肝を冷やしたが、零子はホッと胸を撫で下ろした。そしていくばくか平静さを取り戻した桐彦たちは、恨めしそうに同情の言葉をこぼす。


『きみもやられたんだな、あいつらに』


「ん? そりゃどういう……」


『気づいておらぬか。貴様の両親や弟を手にかけたのは、西沖会にしおきかい残党ざんとうたちだ』


「!?」


 以前、とう使ぐみの組長である拓幸たくゆきは、依帖えごの計画に協力したのが『うちの組と長らく敵対関係にある勢力』と言っていた。ともすれば、その勢力こそが彼らのいう"残党"に該当すると思われる。


の組織は、今なお水面下で存続している。とかげの尻尾切りを繰り返し、巧妙に生き長らえてきた狡猾こうかつな権力者が……未だ私腹しふくを肥やしているんだ』


『ゆえに連中へ報復し、うみを出す機会を得られなければ、こちらの腹の虫がおさまることはない。……佳果に零子と言ったな。我らは志(なか)ばで、見知らぬ魔神の手によりこの霊道へと囚われ、今日こんにちまで久しく身動きを取れずにいた。しかし貴様らにはそのくさびはらい除けるちからがあると見受ける』


『そこで提案したい。ここは蹂躙じゅうりんされた者同士、反骨のよしみで処置をお願いできないか? もちろん、これ以上きみらや関係のない人間に危害は加えないと約束もする。……さっきまでは、怒りで我を忘れていてすまなかったな』


 話すうちに落ち着いてきた桐彦が切望する。はらわたが煮えくり返っていた福丸も、『我のなかにある数多あまた憎悪ぞうおは甘んじてしずめてみせよう』とあるじの言葉にうなずいた。


 数秒、真剣な表情で目を閉じた佳果。

 彼は「少しだけ時間をくれ」と言って零子のもとへ戻る。


「……どう思う?」


地縛じばくの原因が、彼らの内面でなく外側にあるなら処置自体(じたい)は可能です。ただ……」


「二人が解放されれば残党狩りが始まる。んで、たぶんその因果の影響を受けるのは当事者だけにとどまらねぇ……そうだよな?」


 佳果はよく知っていた。"目には目を、歯には歯を"――そうやって牙をく世界と同じ土俵どひょうで渡り合おうとする限り、自他へ降りかかる火の粉がゆるむ日は永劫えいごうに来ないという真実を。それはかつて、シムルをさとした時よりも深き確信となって彼のなかに息づいていた。無論、その教訓を得ているのは零子とて同じである。


「ええ。つまりあたし達にできる処置は現状、和解による浄霊じょうれいではなく、一方的な除霊じょれいだけ。……彼らの自由意志を捻じ曲げなくてはなりませんが、死してなおカルマで自傷じしょうする姿を見過ごすのと比べれば、はるかにマシといえるでしょう」


(除霊か……)


 すなわち、対話をあきらめて霊界へ強制送還する方法に同義である。だが佳果は、冷静な今の二人こそが本来の魂であると考えていた。ゆえに残された道はひとつだった。


「助言をもらった手前ですまねぇが、零子さん。実は俺……いま別の考えが浮かんでてよ」

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