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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第287話 これ以上

 西沖会にしおきかいの傘下にあった繁殖場の一角いっかくが、自然災害により焼失しょうしつした火災事故。消防団の他、捜査そうさのため駆けつけた警察は、付近に幹部と思われる男が倒れているのを発見した。そして別棟べつむねの倉庫などに残っていた様々な物的証拠から、彼は直前に掛けられていた容疑ようぎ以外にも多量の余罪があることが判明。まもなく重罪人として逮捕たいほされる運びとなる。


 なぜか重度の統合失調症に罹患りかんしていた被告人にはその後、精神鑑定を受けてなお、しかるべき判決がくだったという。それ以降、西沖会の関連施設では不審死や怪奇現象が相次ぐようになり、次第に衰退していった組織はやがて、空中分解の一途いっとを辿った。


 ところで、事件当夜(とうや)から行方ゆくえ不明となっている一般男性は、それから数十年が経過した現在も見つかっていない。



「……っ……ぅえっ……」


 霊視により、眼前がんぜんの怨霊とモノノケの境遇に触れた零子。嘔吐えずきながらうずくまる彼女は、氷のように冷たい身体を温めるようにひざを抱えた。呼吸が苦しくて、涙も止まらない。その異変に気づいた佳果は、すぐに駆けつけて懸命に背中をさすった。


「おい、大丈夫か零子さん!」


「ごめん……なさい……あたし、心がぐちゃぐちゃになって…………?」


 隙間からのぞくと、どういうわけか彼もまた泣いている。


「佳果さん……?」


「……零気()しに、ウーが零子さんのているビジョンを共有してくれたんだ。あいつら、魔神の力を借りて己の存在を(・・・・・)変換してまで(・・・・・・)連中の断罪を執行しっこうしたみたいだな。そんで団が瓦解がかいしたあとも、人間そのものに対する負の感情に縛られたまま……霊道を彷徨さまよっているうち、この場所へと流れ着いた。そんなところか」


 佳果は自分の着ていたアウターを彼女にかけ、二、三歩ほど前へ出た。対峙たいじする二つの黒は、零子の精神状態が不安定になった影響で拘束こうそく術が解け、すでに自由の身となっている。


『クク……これで決着だ。さあ、狂気に染めてやろう』


『弱者をしいたげる人間どもよ。我らと同じ苦しみにあえぎ、骨の髄まで贖罪しょくざいしたのち……その薄汚い命を散らすがよい』


「――あんたらは、誰にも動かせねぇ激情を持っている。それをてめぇの自由意志でつらぬくっつうなら……俺にできんのは、全霊で受け止めてやることだけだ」


 彼は涙をぬぐうと両手を広げ、胸を張って大の字を形成した。


「! ダメです佳果さん!!」


『……ほう』


『ふん、殊勝しゅしょうぶって心にもない台詞せりふを口にすれば、なさけをかけてもらえるとでも思ったのか? 愚か者め、いまさばいて――』


「……けどさ、桐彦きりひこさん。それに仲間たちの想いを背負しょい過ぎて、そんな姿になっちまった福丸ふくまるもよ……俺、これ以上あんたらが傷つくのだけは見過ごせねぇわ」


『!?』


『貴様、なぜ我らの名を……!』


「二人とも、遠慮はらねぇ。……ありったけの怒りを俺にぶつけやがれ!」

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