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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第286話 贖罪

(うぐ……何が起こりやがった……!?)


 豪雨と火炎がせめぎ合うさなか。気絶し、うつ伏せで倒れていた西沖会にしおきかいの男は、流血する頭部を押さえながら片膝をついた。その視野のせばまった瞳が辛うじて捉えたのは、周囲に立ちのぼる水蒸気と黒煙、そして爆風で崩壊した施設の残骸ざんがいだった。


(落雷……? クソッ、冗談じゃねぇぞ!)


 こうなってしまっては、消防団や警察が動くのは時間の問題である。先ほど処理した松葉杖の男の犬に関しては問題ないが、まだ証拠隠滅が不十分な案件は複数残っていた。今は舎弟しゃていたちも別の計画のために出払っているゆえ、この状況で採れる選択肢は限られてくる。


(ここは放棄してズラかるしか……そういやあいつは? 回収しておかねぇと!)


 生きていても死んでいても、奴は自分にとって不都合な存在だ。すぐに見つけて運び出さなければ――そう考える彼の目に、横たわる大きなキャリーワゴンが映った。まさに不幸中の幸い、あれを使えばなんとかなるだろう。


「っし! あとは奴を探して……!」


『逃げるつもりか。そうはいかない』


「!?」


 振り返ると、背後の炎のなかで人影が立っている。それはどう見てもあの松葉杖の男だった。しかしまるで怪我などしていないかのごとく、ゆっくりと両足を使ってこちらへ歩み寄ってくる。そして彼の周りには沢山たくさんの青白い不気味な粒子に加え、本能的な恐怖を感じる黒い霧が浮かんでいた。


『貴様だけは楽に死なせんぞ。魂の狂気におかされ、罪をあがなうがいい』


「は……? お前、マジでイかれて――」


 瞬間、雷光によって桐彦きりひこの表情がはっきりと見えた。あらゆる悪意を内包ないほうしたその人間らしからぬ眼差しにすくめられ、彼は硬直を余儀よぎなくされる。同時に青い粒子が大量のドクロに姿を変え、無数の怨嗟えんさおおいかぶさってきた。


『お腹すいたよ』『喉かわいたよ』『狭いよ』『出してよ』『痛いよ』『苦しいよ』『やめてよ』『どうして』『どうして』『どうして』『どうして』『どうして』『どうして』『どうして』


 それらの声が誰から発せられているのか、直感的に理解する。直後、黒い霧が身体にまとわりつき、男は恐ろしさのあまり拳銃を乱射した。


「来るな……こっちへ来るな……!!」


 だが、弾が命中したはずの桐彦は依然として歩みを止めない。

 その手には、スタンガンが握られていた。

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