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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第282話 主犯

 しばらくして。「待たせたね」と息を切らしておじいちゃんが戻ってきたため、桐彦きりひこは水筒をお返しし、まず一息ついてもらった。そうして少しのを置いてから詳しく話を聞いてみたところ、意外な朗報ろうほうが届けられる。


「この件、なんとかなるかもしれないよ。おまわりさんが言うには、すぐ近くに自治体が設置した防犯カメラがあるんだって」


「ほ、ほんとですか!?」


「うん、不審な車が映っていないか、さっそく開示かいじ請求してくれるそうでね。本当は被害届を出してから動かなきゃいけないみたいだけど……現場の状況と、きみの身体のことを説明したら臨機応変に対応してくれた」


「っ……そうだったんですか……本当にありがとうございますっ!」


 再びこぼれた涙が手の甲に落ちる。それをペロリと舐め、寄り添ってくれるおじいちゃんの犬をでていると、続いてしょから派遣されたとおぼしき警察官がやってきた。


「あなたが、さらわれてしまったというワンちゃんの飼い主さんですね? わたくしこういうものですが……少々お時間を頂いてもよろしいですか」


「! はい、お手数をおかけします」


 こうして改めて事情聴取を受けた桐彦たち。最終的に警察官は「何かわかり次第(しだい)連絡します」と言い残し、その場は解散の運びとなる。



「来ないな……」


 あれから数時間がった。外は夕闇ゆうやみに包まれ、そのくらさが窓越しに不安をあおってくる。差し当たり帰宅した桐彦は、一向に鳴らぬサイドテーブルのスマホを横目よこめに、ベッドへ横たわりながら一縷いちるの望みをかけ、ひたすらに福丸の無事を祈った。


(どうかあいつが見つかりますように……)


 目を見開いて何度もそう念じる。しかし心が憔悴しょうすいしていた彼は、疲労困憊(こんぱい)の身体も相まって、徐々にまぶたが重たく感じられるようになっていった。やがて飛ぶように意識が途絶えてしまい、さらに時は流れゆく。


 そのどのくらい寝ていただろうか。気がつくと、スマホが振動音を立てていた。桐彦は勢いよく上体じょうたいを起こし、画面の電話番号を確認した。案の定、相手は警察である。


「も、もしもし……!」


「夜分に失礼いたします」


 丁寧な口調の担当から、今日の昼間に起きた事件について聞かされる。最初は寝ぼけた意識で相槌あいづちを打っていた桐彦だったが、防犯カメラの映像から犯人を割り出したというくだり以降、一気に脳が覚醒かくせいしてゆく。


「やっぱり福丸ふくまるは誘拐されたんですね!?」


「お気の毒ですが、間違いありません。そしてこれを言うのは非常にはばかられるのですけれど……今回の主犯しゅはんは、"西にしおきかい"と呼ばれる暴力団の傘下さんかにある繁殖はんしょく業者と思われます」


「え」


「福丸くんは連中の施設に連れ去られた可能性が高い。今、我々は家宅捜索(そうさ)の準備を――」


 真摯しんし経緯いきさつと状況を話してくれる警察。だが暴力団、繁殖業者と聞いて頭が真っ白になってしまった桐彦は、その内容を半分も理解することができなかった。

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