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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第279話 拒絶

 以前魔神(ましん)と対峙した際のごとく、零子は水晶や神符などを用いて相手あいて(かた)の動きを封じた。光の輪に捕縛された人型と獣が、無理矢理それをはずそうともだえている。


『ぐぅっ……動けぬ……!』


畜生ちくしょう、仲間がいやがったのか……!』


 きっと強力なじゅつなのだろう。やがて抵抗をめ、こちらをにらみつけるだけとなった両者。その刺すような視線に冷や汗をかきつつ、佳果は零子に問う。


「なあ、怨霊おんりょうはわかるけどよ……モノノケってのは?」


「先ほどあなたが浄化した黒――人の負の想念を喰らった、動物霊といったところでしょうか。素性すじょうはアスターソウルの魔獣に近い存在ともいえます。ただ……」


「……どう見ても尊厳(・・)がある。どっちかっつうと、中身は魔物()りなわけか」


『何をごちゃごちゃと!』


『人間め! 絶対に取り殺してやるぞ!』


 分析ぶんせきさえぎるように野次やじが飛んでくる。おおかみの姿をしたモノノケはグルルと威嚇いかくを続け、人型のほうはわった目でギリリと歯を食いしばっている。事情はわからぬが、彼らは強い恨みの感情に支配されているらしい。佳果の脳裏に、東使とうしぐみの親父さんがよぎった。


(……本人が愛を拒絶している場合、零気が届かねぇのは知ってる。ならあの時みたく強制的に黒を受け取ってやりたいが……ここは精神世界でなく現実世界だ)


『うん、いま主様ぬしさまを頼ることはできない。それにもし頼れたとしても、どのみち吾輩わがはいたちの零気は彼らに通用しないと思うよ』


(? なんでだ)


『負の想念は生体せいたいより、死霊しりょうのほうが深く魂と結びつくから。実際あの二人は、ヨッちゃんの"真の勇気"を見ても目の色ひとつ変えなかった……よほど熾烈しれつな恨みを抱えているんだろうね。たぶん、晴らすまで拒絶はけないはずさ』


(そう、なのか……)


 先刻ウーが言っていた"見極め"という言葉。そしてここへ来る前、岬季が示唆しさした『遅かれ早かれ通ることになる道』の真意。俄然それらが()に落ちた佳果は、己の無知と未熟さに打ちひしがれる。


「……悪い零子さん。どうやら俺、こいつらの前じゃ役立たずみてぇだ……」


「――何をおっしゃいますか。あなたや師匠がそこに居てくれるだけで、あたしの心はつよくれるんです。ふるい立つのです! ……さっきの零気、かっこよかったですよ? ウーちゃんにも、支援していただき感謝しているとお伝えください!」


「……!」『えへへ、ばっちり聞こえてるよレイちゃん!』


 彼女は振り返らず、背負っていた錫杖しゃくじょうと呼ばれるつえを地面にさし、シャンシャンと二回ほど鳴らした。そうして凛然りんぜんとした声で言う。


「佳果さんは引き続き、負の想念への対処を。他はあたしが一手に引き受けます! ……さあ。あなたがたの苦しみ、分かち合わせていただきましょう」


 目を閉じ、おきょうのようなものを唱え始める零子。刹那せつな、鍛えられた霊感がせる脳内ビジョンに、モノノケたちの記憶が流れ込んできた。そこには一匹の犬と人間の男が仲良く暮らす、在りし日のあたたかな風景が映っていた。

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