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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第278話 氾濫

  岬季の推測が正しく、もし暗黒神によるカモフラージュが働いており――また佳果の直感にたがわず、彼の両親らが本件に絡んでいた場合。魔神サイドが現実世界へもたらす悪影響は、実に二十年以上も前から積み重なっていたことになる。


 そんな途方もない因果の不正操作に自分たちが終止符を打ったのだという実感が、佳果の心に改めて押し寄せてきた。同時に、根本的な疑念も生じる。


(あの時あいつは『安寧を』と言ってあっさり消えた。創造神と同じ7次元の領域から世界を混沌こんとんに導いていた存在が、今になってこちらの在りかたを肯定した理由か……考えてみりゃ誠神せいしん側もそうだが、俺たちのアスターソウル攻略を前提に動いているよな。なら"本当のエピストロフ"の先にある幸せっつうのは……)


「……? 佳果さん、いつになくけわしい顔をしてますね。まあ霊道の中心部にいる手前で無理もないですけど……体調は大丈夫ですか?」


「! お、おう、問題ねーぜ! それよか岬季さん、神不在(ふざい)祈祷きとうしたところで効果あんのかよ? 実質、謝る対象がいないわけだろ?」


「そこは別途、山の神を呼び戻す他にないだろうねぇ。でもそのためには当然……まずはこの場をただし、先んじて鬼門をふさいいでおかなくちゃならない」


 岬季が一歩前に出て、神気纏繞(てんじょう)をおこなった。


「今からあたしの守護神様のちからをお借りして、病巣びょうそうとなっている負のエネルギーの掃き溜め目掛めがけて光をそそぐよ。その反動で、例によって噴水のごとく闇が氾濫はんらんしてくる。あんたたちはそれらの対処を手伝っておくれ」


「対処って……具体的にどうすりゃいいんだ?」


「零子は浄霊術、坊やは零気をお使い。といっても九割(がた)あたしのほうへ引きつけるつもりだから、あぶれた分だけでいいさね」


「わ、わかりました。正直、不安しかないですけど……師匠に一人前って認めてもらいましたし、がんばります!」


「ま、この場所がみんなの不幸を助長してたってんなら俺も寝覚めが悪い。やれるだけのことはやってみるぜ」



 土地祈祷が始まった裏山の一角。周辺の空気はピリピリと張り詰め、次第に湿った冷風が吹き乱れてゆく。また、それぞれの脳内には悲痛な怨嗟えんさささやきが響き渡っていた。さなか、佳果は明虎にもらった神符のストックを駆使して神気廻心(えしん)に至り、零気を試みる。


(ウー、今日の仕事はこれまでと少し毛色けいろが違うみてーだぞ)


『……そのようだにゃあ。ヨッちゃん、見極め(・・・)は慎重にね』


(? そりゃどういう……)


「来ましたよ、佳果さん!」


 ウーとのやり取りに、零子が割りる。零気を発動した佳果には、彼女の指差す方向から勢いよく飛来する"黒の群れ"が視認できていた。


「! よし、初動は俺たちがなんとかする!」


 直後、心にホワイトホールを形成し、"真の勇気"をって愛のエネルギーを放つ佳果。輝きに包まれた黒は、その一部を霧散させた。しかし――。


鬱陶うっとうしい力だ……』


『あいつが元凶げんきょうか。取り殺してやろう』


「なっ!?」


 煙のなかから明確に意思のある二つの存在が現れる。片方は人型で、もう片方は獣をかたどっていた。そしてなぜか、彼らには零気が通用しないらしい。不測の事態に気圧けおされる佳果の肩を掴み、零子がかばうように前へ出る。


「あれは……怨霊おんりょうとモノノケです! ここから先はあたしにお任せを!」

お読みいただき、ありがとうございます!

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