第266話 利害の一致
「――と、以降は今日のような具合で活動してゆくかたちになりますが。何か質問はありますか」
「……そりゃ、あるに決まってるだろ」
帰りの車内。高速道路を走りながら平然と質疑応答を始める明虎に、佳果が呆れ顔で流し目を送っている。考えてみれば、まだ釈然としない部分も多い。彼は現段階で抱いている疑問点を解消しておくことにした。
「まずあんた、どうして任意団体なんかやってんだ? 名前は確か……『椨』だったっけか」
「ふむ、そう言われましても……所詮はボランティアですからねぇ。慈善活動の動機など、特段聞くまでもないでしょう」
「するってーとあれかよ。やっぱ"世のため人のため"的な……」
「まあ、そこはご想像におまかせします」
「…………」
仮に相違なかった場合、「らしいな」と「らしくねぇ」の同居するこの気持ちは一体なんなのだろうか。佳果はふうと息を吐いて、次の質問を投げかけた。
「んじゃ、なんで俺をつかおうと思った? そもそも、ウーの転生を手伝って俺に零気を取り戻させた理由はなんだ? ……こちとらまだ高校生だし、あんたやゾグみたく色々と技術や知識を持っているわけでもねぇ。今回の件だって、あんたほどの奴なら別に一人でも不足はなかったはずだろ」
「……クク」
「あん?」
「とりあえず、今は先行投資とでも思っていただければ」
(……最初に会ったときと同じ、"知りたい"の延長線上ってか)
不敵に笑うこの男の本懐――それが夕鈴とチャロの笑う世界であることは、既に佳果も承知しているところである。そしてその完遂には、陽だまりの風によるアスターソウル攻略が必須条件となるわけだが。
(……ま、どんな思惑があるにせよ、そこがブレねぇなら無理に詮索する必要もないか。俺自身、零気を通してエリア移動しようっつう魂胆があるわけで……せっかく渡りに船の状況なんだしよ)
そう自分を納得させると、佳果は最後に尋ねる。
「しっかしあの紹介サイト、なんか古臭い感じだったよな。あんまそういうの詳しくねーけど……あれで、普段どのくらい依頼が来るんだ?」
「はて、依頼を受けたのは今日が初めてですが」
「……は?」
「タブノキは昨日立ち上げたばかりの組織です。サイトが拙いのは、急ごしらえでまだ最低限の環境しか構築できていないからですよ」
「……いやいやちょっと待て! ならさっきの……矢一を救ったのは、昨日の今日で取り付けた約束だったってのか!?」
「ええ」
「"ええ"って……一体どうやって!」
「ある筋から情報提供がありましてねぇ」
「?」
「あなたとも縁のある所です。……東使組と言えばおわかりでしょう」
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