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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十四章 幸せの表現法 ~自分のためは、世界のためで~
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第261話 助手

 高速道路を走ること約30分。やがて目的地である児童養護施設に着いた二人は、ニットベストを着た初老の職員に案内され、応接室にて詳しい事情を説明してもらう運びとなった。明虎は帽子を取って着席すると、テーブルに両肘りょうひじをつき、口元で両手を組みながら尋ねた。


「――して、例の矢一やいちくんという十歳の男の子ですが。くだんの症状……発作ほっさ的な他傷たしょう行為というのは、いつ頃から?」


「二ヶ月ほど前です。……あの子がうちに入所したのは三ヶ月前でしたので、およそ一ヶ月でそういう状態になってしまったことになりますね。元々は、とてもおとなしくて性格も優しい子だったんですが……」


「なるほど。……失礼、念のため確認させていただきますが、それが施設内における人間関係に起因しているという可能性は?」


「低いといえます。なにぶんあの子は人見知りなものでして、そもそも他者との接点をつくろうとしません。向ける矛先ほこさきも無差別的で……どうも特定の誰かに対する恨み辛みや、施設へのSOSという感じでもないのです。私どもの結論としましては、前触れなく何らかの精神疾患を発症してしまったと考えており――おそらくそういう原因(・・・・・・)も根底にあるのではないかと」


「ちなみに入所する前、持病じびょうなどはありましたか?」


「いいえ、ございませんでした」


「……ふむ。そして医師へせるも、診断結果は"原因不明"。それで途方に暮れていたところ、我々のホームページを発見し、ご連絡いただいたわけですね」


「そのとおりです」


 "我々のホームページ"なるワードを聞き、ここまで黙って話を聞いていた佳果がピクリと反応を示す。「なんだそりゃ」と顔に書いてある彼の手元てもとへ、明虎は依頼人から視線を動かさず、静かにスマホを差し出した。画面には『任意団体』の文字と、いわゆる"目には見えないものにまつわるトラブルを解決するボランティア活動をおこなっています"といった旨の紹介文が表示されている。


(げっ! こ、このおっさん、どこの世界でも怪しいことしてんのな……しかしそうなってくると、さっき職員さんが言ってた"そういう原因"っつうのは……)


 佳果がいろいろと悟り始めるなか。職員は「状況はそんなところでしょうか」とため息をついた後、いっそう真剣な表情になって身を乗り出した。


「それで波來ならい様、いかがですか。矢一やいちくんが治る見込みのほどは……!」


「お話を伺ったかぎり、こちらで対処できる範疇はんちゅうにあると存じますよ。私の助手じょしゅはたいへん優秀ですしね」


「お、おお……」


 大きく出た明虎のげんによって、アツい期待の眼差まなざしを向けられる。佳果は「はは」と精一杯の愛想あいそ笑いを返した。


(誰が助手だよ! ……まあ、こいつがやる時はやる奴なのはよく知ってるし……おれみで勝算があるってのは本当なんだろうけど)


「ただ、実際に本人を見て判断すべき部分もあります。恐れ入りますが、面会させていただいても?」


「はい! ではこのまま、少々お待ちください」


 意気揚々と部屋を出てゆく職員を見送り、佳果がぽつりと言った。


「……役に立ってもらうって、こういう意味だったのか」


「ええ。不服ならば、今から辞退じたいされても結構ですが?」


「んなわけねえだろ。すぐ近くに苦しんでるやつがいて、俺にできることがあるってんなら……やるべきはひとつじゃねーか」


「フフ、よい心がけです」

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