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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第258話 覚悟

 えんもたけなわ、深夜のアスター城。じゃれ合いは落ち着き、アーリアが休憩スペースで幸せそうにウトウトしている。その無邪気な様子を見て、チャロはやれやれと肩をすくめた。


「まさかわたしにも飛び火するとは……」


「はは、このあいだの通話でヴェリスに対抗意識を燃やしてたもんね、アーリア姉ちゃん」


(そういえばそんな一幕ひとまくもあったような)


 突発的に起こったアーリア主催の"ウーをハグする会"――シムルに続いて素知らぬ顔をしていたチャロが強制参加させられたのは、どうやら先日()っていたフラグの回収イベントだったらしい。


 「ま、まあ別に嫌ではなかったですけれども……」と満更まんざらでもなさそうにしている彼女のもとへ、佳果たちとの談笑だんしょうを終えた零子が合流してくる。


「えへへ、なんだか大変なことになってましたね?」


「み、見てたんなら助けてよ零子姉ちゃん……」


「またまたぁ、本当は嬉しかったくせにぃ!」


「! そ、そんなことないって! お、おれ兄ちゃんたちのとこ行ってくるから!」


 ダッシュでその場を立ち去るシムル。口元を手でおおってうふふとその背中を見送った零子は、そのまま視線をアーリアに移した。


「でも、お姉さまがここまで羽目はめはずすのも珍しいですね……まあそれくらい、ウーちゃんの復活を祝福しているということなんでしょうけど♪」


「うん、アーちゃんすっごく喜んでくれてて、吾輩わがはいもとーっても嬉しいよ! ……ただ実際には、別の理由(・・・・)もあるみたい」


「別の理由? ウー、どういうこと?」


 きょとんとたずねるヴェリスに、彼は「実は……」と切り出す。しかしチャロが即座そくざにそれを制止し、ちょいちょいと三名を部屋のすみに手招きした。


「ウーさん、デリケートな話題ですからあまり声高こわだかにはしないほうが」


「そっかあ、ごめんごめん」


「デリケート…………あの。もしかしなくても、ご親友の件でしょうか?」


 声をひそめ、零子が真面目まじめなトーンで確認する。

 "親友"と聞いたヴェリスもすぐに真剣な表情になった。


「そうだね。アーちゃん、事あるごとにその子を思い浮かべてるし」


「……人の心を盗み見ているようで忍びないのですが、アーリアさんは近日中に彼女――奈波ななみさんのお墓参りに行く予定のようですね。それがどのような意味を持っているのかさだかではないものの……どうやらかなりの覚悟をともなっているのは、間違いありません」


(覚悟……?)


「アーちゃんは今、ちょっと不安定な状態なんだ。本人にもその自覚があるから、パーティーを満喫まんきつして気をまぎらわそうとしているのかも」


(……お姉さま)


 またもや、見落としていたのだろうか。いつも光学こうがく迷彩めいさいのごとく鳴りを潜めている彼女のかげに、零子はうつむいて寂しそうに口をきゅっと結ぶ。すると、隣のヴェリスが優しく両肩に手を置いてきた。


「ね、零子」


「?」


「アーリア、そのこと……わざとみんなに黙ってるんだよね? ……ならきっと、一人で行こうとしてるんだと思う」


「!」


「わたしたちはまだ、現実世界(あっち)にいけない。でも零子や佳果たちは違う。ついていける。一緒にいられる。はげましてあげられる。だから……どうかアーリアをお願い」


「……ええ、ええ。そのとおりですね、ヴェリスさん!」


 決意の炎を瞳にともす零子。ここで彼女をひとりにする選択肢など、断じてあり得ない。"家族"としてなんとしても力にならなくては。昌弥まさやの件で世話になったあの時みたく――今度は自分が椰々(・・)を助ける番なのだ。


 「あたし、さっそく佳果さんたちと相談してきます!」と言って駆け出す彼女の後ろ姿に、ウーとチャロは互いに見合わせて微笑びしょうした。


「これなら心配はらなそうですね」


「うん! 吾輩たちは、吾輩たちにできることをやって待っていよう。本当の意味で、心から笑えるようになったアーちゃんを……胸を張って出迎でむかえてあげるために!」


「……ん!」


 少し複雑な気持ちもあるが、ヴェリスはウーの言葉に力強くうなずいた。きらきらのアーリアに恥じぬ、きらきらの自分を見つけるべく。今はみんなの幸せを見据みすえて、愛をやわらかくしてゆこう。――明日から、また忙しくなりそうだ。

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