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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第256話 感化

 アパダムーラがたおれ、暗黒神と相対あいたいした場面が脳裏のうりによみがえる。

 太陽の雫は、そのちからの源泉たる神、太陽神スーリャの顕現けんげんともなって消失した。あれが必然の流れだったのは理解しているが、佳果にとっての宝石は、それ以前にフルーカから借り受けた"大切なもの"であった。勝手に使い果たすような立ち回りをしたことについて、彼は心なしか罪悪感を覚えていたのだ。


「……でも話してたら、ここで謝るのもなんか違う気がしてきたな。もう返せなくはなっちまったのは事実だけどよ。俺はたくしてもらった想いを裏切らねぇよう、今まで太陽の雫(あいつ)と一緒に全力で突っ走ってきたつもりだ。そんでそれは、めぐりめぐって俺たちの願い――夕鈴(ゆうり)の平穏に繋がった。……だからってわけじゃねぇが。今回はお互いに利するところがあったってことで、ひとつ手打てうちにしてくんねーか?」


 頭をき、ぎこちなく笑う佳果。この上なく律儀りちぎで彼らしい申し出に、フルーカは思わず立ち上がり、頭をぽんぽんした。


(あ……)


「ふふ、はなから感謝の念しかありませんけれども……これは和解のしるしです。大事に扱ってくれてありがとう」


「……おう」


「(本当に優しい子ね)……さ、じゃあそろそろ向こうで楽しんでおいでなさいな。皆があなたを待っていますから」


「……おう!」


 今度は心底しんそこ嬉しそうにニカっと笑い、佳果は席を立った。その背中を見送るフルーカの背後に、黒ずくめの男が忍び寄る。


「随分と時間がかかってしまったねぇ。ここまで来るのに」


「ええ。でもこうして、私たちはあるべき未来の一端いったんつかむことができました。……あなたとご神仏しんぶつ様方さまがたのおかげですよ、明虎あきとらさん」


「……フルーカ。いい機会だから言っておく。私は事の顛末てんまつを予測した上でパーティを脱退し、君たちが偽りのエピストロフに辿り着くのを止めなかった。それは動かぬ真実であり――」


「おや? もしかして……うふふ。さてはあなたも、佳果さんに感化されてしまったクチですね?」


「……」


「あなたにもまた、感謝の念こそあれど……恨んだりする理由なんてありません。あなたはいつだって私たちの自由意志を尊重し、ときおり理不尽にすら感じられるその神々のことわり遵守じゅんしゅしながら、ただひたすらに――世界にとっての最善を考え、一途いちずに行動してきただけ。その真心に気づかないほど、私はまだ耄碌もうろくしていませんよ?」


「……」


「ほら、せっかくの祝賀しゅくが会なのです。明虎さんも一杯どうぞ」


 そう言っておしゃくするフルーカの横顔を見て、彼はゆっくりと目を閉じた。そしてフードを取ると、「いただこう」と彼女の隣に座る。

 今日の酒はのちに"美味かった"と思える。そんな塩梅あんばいかもしれない。

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