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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第255話 誉れ

 その日の晩。粒子精霊ウーの転生を成功させた陽だまりの風は、お祝いとしてアスター城の一角いっかくを貸し切り、立食パーティーをもよおす運びとなった。今回は主に身内だけでおこなわれる、ささやかなうたげの席である。佳果とシムルの父、ゼイアが景気のよい乾杯かんぱい音頭おんどをとると、銘々(めいめい)思うがままにコミュニケーションを開始した。


「ばあさん、ちょっといいか」


 佳果は真っ先に、部屋の奥でソファに座っているフルーカのもとへ向かい、隣に座る。驚いた彼女は、初めて会った時と変わらぬんだ瞳で彼を見つめた。


「まあ……ふふ、いの一番で話しかけてくれるなんてとっても嬉しいですけれど。よいのですか? こんな老婆ろうばの相手からスタートして」


「かか、あん時とは真逆だな。俺は、ばあさんだから話に来たんだぜ? "こんな老婆"なんて卑下ひげするなって」


「あらあら、これは一本いっぽん取られてしまいました」


 にっこりと微笑ほほえむフルーカ。しかしすぐに、手元のグラスへ視線をおとす。


「……チャロと夕鈴ちゃんが離ればなれになったあの日から。私はずっと、いったい自分に何ができるのか――自問自答を繰り返してきました」


「……」


「今になってみれば、一連の悲劇は世界が前に進むための宿命しゅくめい……避けられぬ因果だったのだと思います。しかし、それで己の矮小わいしょうさが正当化されるわけではありません。当時の私はあまりに無知で、あまりに至らなかった」


(ばあさん……)


「でもあなたのおかげで、そんな自分を許してあげられるようになったんですよ? すべては繋がっていて、その大いなる流れのなかに私はいる。"太陽の雫"をあなたにお渡しできたほまれ……私は生涯しょうがい忘れることはないでしょう」


 フルーカは会場で楽しそうに笑っている皆を見遣みやると、満足そうにグラスをあおった。彼女の言葉を聞いて、佳果は申し訳なさそうな表情になる。


「そういやあん時、ばあさんを襲っていたのってクイスの連中だよな?」


「ええ、どうやらディメンションアイテムを感知できるかたがトップにいらっしゃって、目をつけられてしまったみたいですね。ログアウトを封じられた私は、プレイヤーの悪意からサブリナたちを守るため、王城から脱走しました。そのあとは、無抵抗をつらぬいていたところあのような醜態しゅうたいさらすかたちとなった次第です。……どんな悪党あくとうであろうとも、人を傷つけるのは気が引けたものでして」


「おいおい、まったく無茶するぜ……」


「"なんとかなる"と信じていたのですよ。そして実際にあなたが来てくださった……うふふ、いわゆる結果オーライというやつです」


「は~、まあそうかもしれねーけどさ。今後はもっと自分を大切にしろよ? でないと、夕鈴あいつが戻ってきたときに顔向けできねぇじゃんか」


「……おっしゃるとおりです。気をつけますね」


 二人のやり取りを物陰で聞いていたサブリナは、うんうんと力強くうなずき、拳を握りしめた。


「ところで佳果さん、私に何かお話があるのでしょう?」


「ん、ああ。改めて謝らなきゃと思ってさ。さっきも話に出てきたが――太陽の雫、あの決戦でなくなっちまったからよ」

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