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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第254話 おかえり

(これが俺の集めた――いや、集めさせてもらった功徳(グナ)ってやつか)


 繊細せんさいな美しさのなかにも、したたかで豊かな白の輝きを放つ球体。佳果の手のひらの上で浮遊するそれは、この世のどんな宝石よりも心()かれ、でたくなるような流動性のある模様を内部に有していた。


「綺麗な光……うっとりしちゃいますね! これが佳果さんの人タラシたる所以ゆえんだと思うと、なんだか感慨深いです~~!」


「うふふっ、前に"トクは勝手についてきているから大丈夫"とおっしゃっていましたが、その看板かんばんに偽りなしでしたわね。本当にあなたという人は……」


 彼の両脇りょうわきからグナを覗き込み、感嘆かんたんの声をもらす零子とアーリア。どれどれと正面にまわったシムルは「すっご!! 見てみろよヴェリス!」と言って彼女を手招てまねきした。背の高いノーストとガウラは、上から興味深そうに見つめている。

 いっぽう楓也は、明虎とゾグのもとへ近づき小声で言った。


「ちなみにあれって、愛珠あいしゅとは違うものなんですか?」


「ん? 本質的には同じといえるのう。愛珠もまた、魔境から出たあとの転生に使われる善報ぜんぽうのエネルギーかいであるゆえ」


「ふむ……あの、ゾグさん。じゃあ今さっきの"反転"だとか、波來ならいさんが使っている神気の大元については――」


「……もぷ太くん。なぜ詮索せんさくを?」


 物申ものもうしたそうな雰囲気をまとって会話に割りってくる明虎。以前の自分なら、この意味ありげな無愛想さにペースを乱されていただろう。しかし彼の原動力が明るみに出た今となっては、もはや邪険にする理由など皆無かいむである。楓也はあっけらかんと答えた。


「え、だって知りたいじゃないですか」


「知ってどうするのかね」


「みんなのために役立てるつもりですけど」


「ならば殊更ことさら必要ない。……君には君の役割がある。私たちのやり方にならおうとするよりも先に、まず己にできることをかえりみるべきではないのかな」


「なるほど、確かにそうですね……わかりました! でも今後、どうしても気になる点が出てきた場合はしつこく聞きに来ますので、その時はサービスしてくださいね!」


「…………」


 そう言って、楓也は笑顔で佳果たちのところへ合流する。かつてない折衝せっしょう力を発揮され、無言でたたずむ明虎をゾグが揶揄からかった。


《ぷぷっ! お主、どうやら扱いかたがバレてしまったみたいだの》


「……取るに足らぬ話に付き合っている暇はないよ。ほら、精霊殿の旅が終わった」


《お?》


 タイミングよくウーの"振り返り"が完了したらしく、粒子の回転がゆるやかになってゆく。上手くかわされてしまったかんはあるが、今はこちらを優先しなくては。ゾグは深い眼差まなざしで彼に問いかける。


《気分は如何いかがかな、粒子精霊よ》


『う、うん……少し目が回ったけど、吾輩わがはい次にどう在るべき(・・・・・・・・)か。おかげ様で、それはもうばっちりって感じかな』


重畳ちょうじょう。では坊主、最後にそのグナを届けてやるがええ》


「ああ」


 皆が見守るなか、佳果はウーの魂に光をそそぐイメージをした。連動するようにグナの珠がひとりでに飛んでゆき、粒子とけ合う。瞬間、創造神のアナウンスが各々(おのおの)の脳内に鳴り響いた。


《……陽だまりの風のみなさん。あなたがたの強くてあたたかく、やさしくて柔らかな意志……たしかに見届けました。ウーちゃん、あなたは星魂せいこんの一部としての存在意義を保ったまま転生を成し遂げた、初の事例です。自らの功績を誇って、来世でも存分にご活躍かつやくくださいね》


 その言葉を認識した直後。

 にわかに『化霞かかの滝』へ転位した一同は、切望せつぼうしていたの姿――生き生きと旋回せんかいしながら、こちらへやってくるウーを力いっぱい出迎えるのだった。


「ただいま、みんな!」

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