表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
257/358

第249話 エピストロフ

 悩める佳果のこころに同調し、岬季は決意した。今しがた彼が指摘してきしていた点――現段階でまだ不透明となっている部分に切り込むことを。


「……創造神様。ちなみに転生の(ことわり)とは、具体的にどういった内容の代物しろものなのでしょうか。先ほどたまわったお言葉にかんがみれば、"循環"や"円環"といった法則の度外視どがいしを、禁ずる意味合いが含まれているのではないかと愚考ぐこういたしますが……」


《そうですね。わかりやすく言えば、決められた手順を踏み、特定の条件を満たさなければいけないという戒律かいりつのようなものです》


「手順と条件、でございますか?」


《詳しくご説明いたしましょう》


 創造神によると、魂が転生をおこなうには、前世ぜんせで積んだ悪徳(カルマ)功徳(グナ)進捗しんちょくについて、あらかじめ当人が正確に把握しておく必要があるらしい。そのためには本来、自分に神気を分けてくれた所縁ゆかりの深い神、ならびにアドバイザーを生業なりわいとする精霊などから、参考となる助言を得るべく専用の特殊領域までおもむき、じっくりと過去かこしょうを振り返る作業をおこなうそうだ。


《この手順を踏まないと、転生先で自由意志が正しく機能せず、魂のすこやかな成長が阻害されてしまいます。それを防ぐための仕組みともいえますね》


(……ヴェリスの場合、たぶん太陽の雫が発動したタイミングでそのあたりが調整されたんだろうな。あれを"イベント"だとか言ってこまかい条件を教えてきた明虎あきとらのことを考えると、元々チャロも似たような境遇きょうぐうっぽいが――なら、今あっちで生きてるあいつらが現実世界に転生するには……)


 佳果が熟考するなか、創造神は《いっぽう条件のほうですが》と続けた。

 いわく、"振り返り"が終わった魂は、来世で生命を得るための準備として、とあるエネルギーを充填じゅうてんする期間に入るのだとか。


《そのエネルギーとはずばり、当人のソウルメイト(・・・・・・)が得たグナです》


「ソウルメイト……? ってなんだ岬季さん」


「一般的には、生まれる前に『影響し合おう、成長し合おう』と切磋せっさ琢磨たくまの約束を交わした、魂たちの相関(そうかん)関係を表す言葉さ。でも転生時に利用されるエネルギーが自分以外のグナに依存いぞんしているなんて話……あたしもこれが初耳はつみみだよ」


《ふふ。つまり、すべての魂は"持ちつ持たれつ"というわけです》


「……なんでそういう仕様になってんのか微妙に気になるところだけどよ。要するにあれだな? とりあえず転生に関しては、その二つを絶対に守る責務せきむがある。なら俺たちが進むべきは……」


「"振り返り"の代行だいこう。加えて、ソウルメイトとしてグナを提供する道ってことになってくるねぇ」


 そしてそれらが対価不要の"正攻法"に該当する場合――逆説的には、その他の手段はすべて邪法の範疇はんちゅうにあり、手痛い代償(ペナルティ)が課せられている道理である。先ほど創造神が提案してきた、ウーと夕鈴ゆうり二者にしゃ択一たくいつもそちらに含まれるのだろう。


「…………ん、待てよ」


「? 何か思いついたのかい坊や」


「いやさ。転生に正攻法があんなら、じゃあ時間軸移行はどうなのかなと思ってよ」


「! ……創造神様、もうひとつだけおうかがいしてもよろしいでしょうか」


 岬季が彼の疑問について伝えると、創造神ははっきりと答えた。


《ありますよ。それも、佳果くんがよく知っている正攻法が》


(俺がよく知っている……?)


《ふふ、あれこれ考えているとついつい忘れてしまいますよね。……よく思い出してみてください。あなたがこの旅路たびじを歩み始めた、当初の目的を》


 佳果はふと、初めてデバイスをかぶったあの日の出来事を浮かべた。まず夕鈴の顔をしたAIを名乗る少女、チャロに面食めんくらって。事故死したはずの彼女が、本当は自分が殺しただのと荒唐こうとう無稽むけいな話を聞かされて。


(そしてあいつは言った。夕鈴は救える。そのため必要なのが――)


 刹那、失念しつねんしていたあの単語がにわかによみがえってくる。


「……時空魔法、エピストロフ……!!」


(ふむ。確かここへ来る前、アスターソウルのクリア条件だと坊や自身が説明していたものだね。会得えとくにはSS(10)なる魂の最終エリアに至らなくてはならず、その過程でプレイヤーたちはパーティを組み、グナを積んでゆく仕様………ははぁ、なるほど)


《おや。もしかして気づかれましたか? 岬季さん》


「はい、僭越せんえつながら」


「え? な、なんだよ岬季さん! 俺にも教えてくれ!」


「……いいかい坊や。そのエピストロフとやらが時間軸移行の正攻法だとすれば、そこで使われるエネルギーもまたグナってことだよ。ただし転生と比べたら、"莫大ばくだいな"って冠詞かんしがつくんだろうけどね」


「!!」


《佳果くんも、もうおわかりでしょう。犠牲や代償といった等価交換ではなく……愛の善報ぜんぽうであるグナをちからに変えて、世界を幸せに導くために存在する唯一ゆいいつ無二むにの時空魔法――それこそが、"本当のエピストロフ"です。ちなみにこれは転生のほうのお話になりますが、あなたが自由意志をって選択した、第三の道を進むという先の英断。あれによって発生したグナは相当量でしたので、あとは"振り返り"を代行する方法さえ発見できれば……ウーちゃんに関しましては、すぐにでも救済可能な状況になっておりますよ!》

お読みいただき、ありがとうございます!

もし続きを読んでみようかなと思いましたら

ブックマーク、または下の★マークを1つでも

押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ