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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第248話 正攻法

 魔の影響によって近しい存在を奪われた世界中の人々。何も知らない彼らからしてみれば、佳果の選択はあまりに利己的かつ縁故主義に映ることだろう。それでも、自分のいない場所で流れゆく夢の時間を彼はどうしても肯定できなかった。


 なぜならば、"すべてはひとつ"であるから。自分が消えた場所に残るのはきっと、そのあたたかな真実が欠けた幻想の因果だけ。ゆえに振りほどかねばならなかった。佳果が望んだのはあくまでも――みんな(・・・)が笑う、あるべき世界なのだから。


《……信じていましたよ、佳果くん》


 彼のつむいだシンプルな言葉をつたき、そこに確固たる信念を垣間かいま見た創造神は、たいそう嬉しそうな声色こわいろでそう言った。しかしすぐに真面目なトーンに戻り、此度こたびの問答に隠された真意を打ち明ける。


《ごめんなさい、試すような真似まねをして。……もしあなたが自己犠牲を選んでいたら、そこには新たなひずみが生まれていたことでしょう。そしてその瞬間――陽だまりの風がこれまで積み重ねてきた"在り方"は否定され、暗黒神は黒の干渉を再開していたと思います》


(あ、暗黒神が……!?)


《そうなってしまった場合、人々は救われた先の未来で、さらなる悲劇に見舞われていたはず。結果論に聞こえるかもしれませんが、あなたの選択は今、本当の意味で世界を救ったのです。……勇敢な決断に、心から敬意をひょうします》


 唐突に最上位の神からとうとばれる佳果。まさかそんな結末があり得たとはつゆほども思っていなかった彼は、気恥ずかしくなりつつも、青ざめながらつぶやいた。


「そんな瀬戸せとぎわに立たされてたのか俺……。しかし、"そうなるかも"ってわかった上で選ばせてくるなんてよ。創造神もなかなか意地が悪いっつうか……」


「こらこら坊や、これは意地とかの問題じゃないんだよ。人の自由意志っていうものは、それだけ尊重されているってことなのさ。そもあたしたちがこうしてここにいられるのだって、その大前提がなきゃ成立してないんだからね!」


「そういうもんかぁ?」


「そういうもんだ。……ま、とにかくあんたは創造神様のこころを裏切らなかった。結果として正しい方向へ進めそうなわけだし、今はそれだけでも万々(ばんばん)ざいだろう」


「……正しい方向ねぇ。なあ岬季さん、参考までにいてもらいたいんだけどさ」


「なんだい?」


「さっき言ってた時間軸移行を利用した方法ってよ。仮に実行していた場合、チャロやヴェリスはどうなったんだ?」


「……アスターソウルにしか身体を持っていないって子たちの話だね? わかった、おうかがいしてみよう」


 すぐに岬季が確認をおこなうと、創造神は《よい質問です》と答えた。


《しかしその疑念が生じたということは……先ほど佳果くんがくだした英断えいだんには、そこに対する配慮もきちんと含まれていたようですね》


「はて……? どういう意味でございましょうか」


くだんの方法は、"不正"がなければ生きられるはずだった人々の命が救われます。でもそれとチャロさんたちが現実世界に行くこととは、また別の話なのです》


「やっぱりか。……これは俺の勝手な予想だが、肉体(うつわ)の無いあいつらが現実世界へ来るためには、結局のところ転生を避けては通れねぇんじゃないかと思ってよ」


「ふむ」


「けどさっき創造神は、転生にゃ"誰にもじ曲げられないことわりがある"って断言していた。……つまりよ。そこを突破できる正攻法(・・・)が見つからねぇ限り、たとえこれが正しい方向なんだとしても……俺たちは先へ進むことができねぇんだ」


(……確かに、それについては未だ分厚ぶあつ暗雲あんうんが立ち込めている状況だねぇ)


「みんなが笑う世界――そいつを空事そらごとで終わらせないために、俺は……俺たちは、一体どうすりゃいい……!?」

お読みいただき、ありがとうございます!

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