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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第247話 浮かんできたのは

「お、俺の魂を……?」


 創造神は『あるとしたら』と仮定の表現を使ったが、この局面でわざわざ実現性のない話を持ち出すとも思えない。意図をかんぐる佳果に、すかさず岬季みさきが補足した。


「坊や。誠神は絶対に嘘をつかないし、規範はあれど基本的に不可能なことなんて存在しない。創造神様がこうおっしゃっている以上、それは実際にある方法ととらえてしかるべきだろう」


(つまり俺が魂をささげれば……俺ひとりの命を差し出せば、ウーだけでなく夕鈴(あいつ)も助かると……?)


 わずかに心が揺れる佳果。そんな彼のもとへ、さらなる情報が舞い込んだ。


《ちなみにその方法を使う場合、あなたの神気の源――太陽神(スーリャ)さんの時間軸移行を利用するかたちになるため、救える対象はそのお二方ふたかただけにとどまりません。暗黒神がおこなった因果の不正操作、その影響を受けたすべての御魂みたまが救済できます》


(!? な、なんだって!?)


《佳果くんのご家族はもちろん、昌弥まさやさんも、椰々(やや)さんのご親友も……失われてしまった世界中の命が、再び現実世界で生きられるようになります。あなたが望むなら、今すぐにそれを実行することも可能でしょう》


(…………)


《ウーちゃんと夕鈴ゆうりさん。どちらかを選べば、どちらかが犠牲ぎせいになってしまいます。でもあなたがあなた自身の犠牲を選ぶ場合は、数多あまたの悲しみが浄化された、夢のような世界が待っている。……以上を踏まえ、もう一度()いましょう。佳果くん。"あなた自身の魂を捧げる"という選択肢があるとしたら、どうされますか?》


(…………)


 先ほどとは打って変わり、即答そくとうできない佳果。岬季も思うところがあったらしく、押し黙る彼に助言を出せないでいる。


 そうして、しんと静謐せいひつが包み込むなか。佳果の意識に浮かんできたのは、かつて陽だまりの風が自分に見せた、様々な笑顔のかがやきであった。



『あなたのいる場所はここだよ』


『大丈夫、君を一人にはしないさ』


『あなたが選ぶと言ってくれた時、すごく嬉しかったのですわよ』


『佳果のいない世界があるなんて言われても、全然(ぜんぜん)信じられる気がしないもん』


『兄ちゃんが守りたいものは、おれだって守りたい』


『まったく……これが天然タラシマンさんのちからですか』


『ヨッちゃん……! えへへ、それでこそヨッちゃんだ』


『吾はこれしきで恩を返せるなどと思い上がるつもりはないぞ』


『ヌハハ、佳果よ、おぬしは恩人じゃ』


『おかげでもう一度、夕鈴と生きる道を探すことができます』



 皆の言霊ことだまが、じわりと魂に染み渡ってゆく。刹那せつな、彼は思い出した。これらの笑顔が生まれた場所に自分はいた――いな、自分がいた場所にそれらの笑顔が生まれた。そしてそれはたぶん、逆も同じであるのだという揺るぎない真実を。


「……岬季さん」


「……なんだい」


「俺さ。みんながいないと幸せじゃねぇ」


「ああ」


「で、そのみんなのなかにさ……たぶん、俺も、いるんだよ」


「……ああ」


「だから俺は……俺をあきらめてやれそうにねぇ。創造神に、そう伝えてくれないか」


「……もちろんだとも」

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