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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第245話 なんとかなる

「よ、佳果さん、いつのに現実世界へ……」


 結界へ向かうと言い残し、ノーストとともに退散していった彼を見届けたのが数時間前のこと。このかん零子は、積もりに積もった過去と未来の話を昌弥まさやと存分に語り合っていたわけなのだが――佳果においては、知らぬうちにとんでもない計画を進めていたらしい。なにせひそかにログアウトし、眼前がんぜんの人物をここまで寄越よこしてしまったのだから。


「というかご無沙汰ぶさたじゃないですか師匠! 東京の実家に帰られるっておっしゃった日に、あたし連絡先を渡したはずですよね!? あれから随分()ちましたけど、今日までずっと音信不通で……てっきり雲隠くもがくれでもされてしまったのかと、すっごく心配していたんですよ!」


「あっはっは! ま、"便たよりの無いのは良い便り"って言うだろう。お互い元気にやっていたんだし、そう喧々(けんけん)しなさんな。……それより零子。あんた、あたしが見てないあいだもちゃんと頑張り続けていたみたいだねぇ。その努力がを結んで、今こうして念願の彼氏かれしの元まで辿り着いている。……大変だったろ、ここに至るまでの道のりは」


 しみじみとした優しい声色こわいろで、ねぎらいの言葉を掛けながら彼女の頭をでる岬季みさき。零子は一瞬かたまった後、飛びつくように抱擁ほうようを繰り出し、懐かしきぬくもりと香りに包まれながら涙を流した。


「うぅ……師匠ぉ……っ!」


「よしよし、本当に良くやったね零子。……魂をればわかるよ。あんたはもう、霊能者として一人前だ」


「ほ、ほんとですか……!?」


「ああ、これならなんとかなる(・・・・・・)だろう。……それもこれも、全部あんたのおかげさ昌弥まさや


「?」


「あたしでも手に負えないような()の連中から、よくぞこの子を守ってくれたね。結果として、文字どおり地獄へ突き落とされてしまったようだけど……あんたが居てくれたからこそ――こころれず、この地で足掻あがき続けてくれたからこそ。あたしたちはこれから、光栄にも世界を救う手伝いができる」


 岬季の言葉にきょとんとする二人。零子が「あの師匠。それで、こちらへお越しになった理由って……?」と質問を投げかけたところ、彼女は昌弥に向かってサムズアップを放った。


逢瀬おうせの途中にすまないねぇ。ちょっとだけこの子 りるよ!」



「ふう」


「! 岬季さん、戻ったのか!」


 瞑想めいそうしていた佳果は、意識を取り戻した彼女を見て身を乗り出した。


「おお坊や、待たせたね。今しがた零子にゲームとの接続を切ってもらった。これで現実世界(こっち)にいるあの子の霊力を触媒しょくばいに、創造神と対話する準備がととのったよ」


(や、やっぱマジで行ってきたんだな……一体どんな手品てじなつかったんだ)


「さて、じゃさっそく始めるとしようか。まず最初に断っておくが、創造神の神符しんぷなんてものは目下もっか、世界中のどこを探しても存在していない。だからあたしが作った"目には見えない"オリジナルのそれを使って神気廻心(えしん)の状態に入ってもらうよ。ほら、両手のひらを前に出して、リンゴひとつ分くらいけときな」


「こ、こうか?」


 佳果が言われたとおりのポーズを取ると、岬季は目を閉じて合掌し、何かを念じ始める。呼応こおうするように、彼は両手のひらの間でエネルギー塊が形成されてゆくのを感じた。そして予行練習の時と同じく、内外の神気が混ざり合う。


(うし、あとは均一化を成功させるだけだ!)


(へぇ……たいした霊感もないのにすじがいい。生命エネルギーは人によって凹凸おうとつが違うから、コントロール手順に決まったかいはないはずなんだけどね。まるで誰かに最短ルートを教えてもらったことがあるようなならしかたじゃないか)


 実際じっさい佳果は、超感覚を持つヴェリスの指示によってこの技術を熟達させた経緯いきさつがある。思いがけず質の良い神気廻心をやってのけた彼を一瞥いちべつし、岬季は満足そうに微笑んだ。次は自分の番である。


(いざ、神気纏繞(てんじょう)


 テラリウムと化した瞳の奥で、彼女の意識は佳果のそれを引き連れ、一気に幾重いくえもの次元を超え飛んでゆく。向かう先は7次元――創造神の領域だ。

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