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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第244話 邁進

「ほほう……いくつになっても知らない世界ってのはあるもんだ」


 たぐいまれなる霊感によって次元を超え、アスターソウルの地に降り立った岬季みさきの意識。現実世界の姿を反映したジャージ姿で彼女がたたずんでいるのは、最初の町ヴァルムの郊外だ。


《警告。不正アクセスを感知しました。恐れ入りますが、いくつか質問させていただきますので、うそいつわりなく正直にご回答をお願いします》


(ん? ……これは念話…………いや、"神言しんごん"だねぇ)


《あなたのご出身はどちらの次元ですか?》


「3次元――地球から参りました。名を雨知あまち岬季と申します」


《なるほど、"人"ということですね。ありがとうございます。次に、あなたがこちらへお越しになった目的を教えてください》


「そうですね……あたしは別段べつだん、このゲームをやりに来たわけではございません。ただ地球(こきょう)や宇宙の安寧あんねいのため、天命てんめいを果たすべく……取り急ぎ、裏口から入らせていただいた次第です」


《……》


御神おんかみはこの世界を管理されている立場にあらせられるのでしょうか? もしそうであるならば……あたしは前任(・・)の本懐を支援する者のひとり。すなわちあまてらすおおかみや、その先に御座おわそうぞうしん様のご神意をむ目的で馳せ参じた所存。……この表明では不足でしょうか」


《……いいえ、十分じゅうぶんです。ただし、裏口を使うのは今回だけにしていただけますか?》


「ええ、かしこまりました。ご無礼をはたらき、誠に申し訳ございません」


《うふふ、こちらこそ高圧的な言葉の数々、心よりお詫び申し上げます。それではあなたの滞在を許可いたしますが……ふむ、どうやらお探しのむすめ様がおられるようですね。しかし現在、彼女はこの領域にいないものかと存じます》


「……おっしゃるとおりで。痕跡こんせきるに……居場所は幽界ゆうかいですか」


《ご明察です。プレイヤー名『和迩わに零子れいこ』様は、ゆえあってアスターソウルから一時的に離脱し、魔境に身を置かれている状況にあります。わたくし斥力せきりょくの関係であなたを直接お送りしては差し上げられないのですが……微力ながら、せめてチャネリングには協力させていただきましょう》


「なんと、ありがたき幸せ。よろしくお願いします」


 こうしてやり取りを終えた岬季は、チャロの後任にあたるの神のアシストによって魔境の隠れ里を正確に捕捉し、一時的に"無意識の拡張"および"魂の捕捉"をおこなった。シムルの持っている能力と同じようなちからをろうせず発揮はっきした彼女は、そのまま瞬間移動を試みる。刹那せつな、強制的に経由するかたちとなる次元のはざま――そこに充満する瘴気がまとわりついてきた。


魔神ましんのエネルギーか……量も濃度も、ちと荷が重いね)


 彼女は須臾しゅゆって、最寄りの魔神へ念話を飛ばす。


『突然すまないねぇ。聞こえていたら、ちょっと助けてほしいんだけど』


《ん、誰だ? ……あー、あんたは零子ガールの》


『おや、もしかしてうわさのムンディかい? ……魔神と喋るなんて数十年ぶりだが、なかなかイカした波動をしてるじゃないか。姿をおがめなくて残念だよ』


《おっ! なんだ、あんた話のわかる人間だな! 待ってろ、いま俺様のパワーを送ってやるから》


 ムンディが遠隔で、岬季に瘴気を相殺そうさいするころもを着せた。

 ――もちろんアロハシャツである。


《よし、これで魔境(あっち)に行けるぞ。んじゃまた機会があったら、今度はぜひ一緒に茶でも飲もうぜ? 数千年でも数万年でも待ってるからさ》


『あっはっは、そりゃ楽しみだ! 違反いはんしてまで助けてくれて、あんがとねムンディ!』



 とうとう隠れ里まで辿り着いた岬季は、周囲を見渡す。


(魔境……マトモな霊能者なら、絶対に意識を合わせたりしない次元だね。でもほとんど悪影響が感じられないのは……アスターソウルを介して守護(・・)を得ているからか。よくできているゲームで感心しちゃうよあたし)


「し、し、師匠~~~っ!?」


 にわかにとんきょうまな弟子でしの声がして、彼女はニヤリと笑いながら振り返った。果たしてそこには、目をいている零子。そして生前に感じたことのある波動――昌弥まさやの魂を宿していると思われる、異形いぎょうの姿があった。

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