第238話 灯台下暗し
《精霊の転生ねえ》
門を潜って次元のはざまに至った二人。弾力のある白い煙の床に座りながら、佳果はノーストとムンディに自らの目的について詳しく話した。上位誠神に接触しなければウーを助けられる見込みが立たないこと。その足掛かりを得るために、魔神である彼を頼りにここまでやって来たこと。包み隠さず、全てを告白する。
「つーわけでさ。ムンディ、なんとかならねーか?」
「……魔神よ。うぬは以前、"法廷"なる転生絡みの仕事に関わっていると明かしていたはずだ。よもや何の情報も持っていないとは言わぬだろうな?」
《そう睨むなって。……まあ、別に隠蔽する必要もないしな。結論から言うと、俺様のちからやツテで、転生うんぬんに介入するのはまず不可能だ。残念ながら》
「! そんな……」
《さらに言えば、上位誠神である太陽神――スーリャや、ウーが仕えていた黒龍クルシェ、夕鈴ガールを守護していた禍津神のホウゲンであっても、生まれ変わりに纏わるシステムには手出しできない。なぜなら担当がもっと上だからだ》
ムンディによると、魔神界隈と同じく、誠神も神格によって出身の次元、およびちからを発揮できる分野や管轄が異なるらしい。クルシェとホウゲンは5次元、スーリャは6次元の誠神に当たるという。つまり、輪廻転生を司っているのは。
「7次元……あの暗黒神とかいう黒幕と、同じレベルの誠神ってことかよ」
《ああ。通称、創造神と呼ばれる存在でな。雲の上すぎて正直、俺様たちもあまり詳しい事情は知らない》
「……ちなみに、うぬは何次元の魔神なのだ?」
《俺様は6に限りなく近い5次元ってとこか。これでも昔に比べりゃ、だいぶ出世したほうなんだぜ》
「昔だぁ? ……そういやお前って、どういう経緯で魔神になったんだ? つか、よく考えると誠神側との関係も謎だよな。やたらフランクに接してたけどよ」
《クク、そのへんはいつか機会があったら教えてやる。それより今は、ウーを助ける方法が知りたいんだろ?》
胡座を掻いていたムンディがゆっくりと立ち上がる。
不敵に笑う彼を見て、ノーストはため息をついた。
「何を言っている。たった今、そんな方法は無いと吾らに現実を突きつけたのはうぬではないか」
《いいや。俺様たちに介入はできないとは言ったが、"他の切り口がない"とは言ってないぞ》
「!? ムンディ、そいつは一体……」
《灯台下暗しってやつだ。全世界、全次元のなかで唯一、誠神に働きかけることのできる存在がいる。それは――あんたら現実世界の人間だよ》
そう言い放ち、黒の空間に現実世界のビジョンを投影するムンディ。
そこにはかつて、佳果が散々世話になった場所が映し出されていた。
「こりゃあ……じっちゃんの道場じゃねーか!?」
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