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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第237話 プンスカ

「おい、なぜ前に出る」


 結界のあるシーマ山の頂上を目指し、徒歩で移動中の佳果とノースト。この地では例によって、魔に由来する攻撃や支援を受けた人間は魂の均衡きんこうに異常をきたし、自我じが崩壊を起こして廃人はいじんまっしぐらとなる。そのためノーストが彼を魔獣の脅威きょういから守りつつ、地道に進んでいるわけなのだが――。


「ん、今くらいの相手なら、わざわざあんたの手をわずらわせることもねーと思ってよ。道中ずっとぼうちってんじゃ、なんかわりぃ気もするしさ」


「……確かに、この付近はまだ弱い個体が多い。うぬのサプレッションをもってすれば一撃でほふれる程度の奴ばかりだ」


「だろ? 不意打ちで仕留しとめりゃ、別に危険も……」


「だが佳果、それはあるしゅの油断ともいえよう。そうやってうぬが前線に立っているおり、もし手練てだれ死角しかくをつかれてしまった場合……いくら場数を踏んでいるといえど、われの反応が間に合わない可能性は十分じゅうぶんにある」


「……」


「うぬの帰りを待つ者、うぬが帰りを待つ者……その双方そうほうのためにも、ここは大人しく守られてはどうだ? こころざしなかばで、万一まんいちのことがあってはならぬだろう」


「…………そうだな、ノーストさんの言うとおりだわ。出しゃばった真似まねしちまって、マジですまねぇ……」


「ふっ。特段とくだん威勢がよいのは、うぬの美点びてんでもある。場をわきまえさえすれば、稀有けう資質ししつに違いなかろう。これにりず今後も大事にみがいてゆけ」


「へへっ、わかったぜ。あんがとな、ノーストさん!」



 その後、慎重しんちょうになった佳果はノーストの勇姿ゆうし後方こうほうから目に焼き付けつつ、危なげなく登山とざんを終えることができた。無事に結界へ到達し、一息つく二人。


「ふ~、やっと着いたか」


「……では、そろそろ聞かせてもらうとしよう。うぬがここへ来た本当の目的(・・・・・)を」


「! なんだ、バレちまってたのかよ」


「今さら結界そのものに用事があるとは思えぬからな。おおかた、本命ほんめいはあちらなのだろう?」


 ノーストの視線の先には、この魔境と次元のはざまを繋ぐ門がそびえている。


「ああ。……その、たぶんあんたは両方ともあまり得意じゃねぇと思うんだけどさ。今日ここに来たのは、ムンディにウーを助ける方法を聞くためだったんだ」


「……なるほど、それで黙っていたわけか」


 彼は最寄りの枯れ木に寄り掛かり、両腕を組んで目を閉じた。


「ひとつ弁明べんめいしておくが、確かに吾はあやつらをいろがねで見ている部分がある。うまく言えぬのだが……どこか同族どうぞく嫌悪けんおのようなものを感じるふしがあってな。顔を合わせると、ついあしらってしまうのだ」


(同族嫌悪?)


「しかし、だからといって頭ごなしに協力関係を拒絶しているわけではない。世界には、あやつらにしかはかれぬ事象が多いことも重々承知している。ゆえに……その粒子精霊の救出とやら、微力ながら吾もすけ太刀だちさせてもらおう」


 そう言って、にわかに膨大ぼうだいな魔力をまとうノースト。次の瞬間、彼は結界の真上まうえに向けて爆発魔法を放った。一帯に轟音ごうおんが鳴り響き、閃光せんこうが結界内を照らす。すると、まもなく門が重低音とともに開いた。


《う、うるさっ!! そんなことしなくたって気づいてるぞ俺様は!》


 中から出てきたお馴染なじみの骸骨がいこつ――新しいがらのアロハシャツを羽織はおった魔神ムンディは、プンスカしながら二人を結界内にワープさせた。

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