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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第235話 見紛うはずもない

「ではゆくぞ」


 正午しょうご過ぎのラムス。ノーストの掛け声に「うむ」とうなずいたガウラは、固有スキルと古代魔法の合わせ技"ラクシャマナク弐式にしき"によって、佳果と零子に絶対防御を付与した。そして次の瞬間、四人は転移魔法で魔境の隠れ里へとワープをげる。


「わわ、本当に一瞬でいちゃいました!」


「おっしゃ、マジで助かったぜガウラ!」


「ヌハハ、わしとノースト殿が組めばざっとこんなものじゃよ!」


 以前はガウラ本人しか使えなかったこの裏技も、条件のそろった今ではパーティ全員が利用できるようになっている。ほこらしそうに笑う彼を見て口元を緩ませたノーストは、近づいてきた里長さとおさ――周治しゅうじ刻宗ときむねにあいさつした。


「たびたび邪魔をしてすまぬな、里長よ。そろそろ住民も辟易へきえきしている頃合ころあいであろう」


「何をもうすか。星魂せいこん世界を守りきったそなたらに対し、白い目を向ける者など……ここには一人もおらぬ道理。どうか気を楽にしてくだされ」


「恩に着る」


「……して、そちらがうわさの佳果殿、零子殿であられるな? お初にお目にかかる。それがしは周治刻宗。知ってのとおり、ここの里長と賢者を兼任けんにんしている」


「おう、阿岸佳果だ。……すっかり遅くなっちまったが、里長さん。俺たち陽だまりの風が今こうしていられるのは、あんたが惜しまずに色々と協力してくれたお陰だ。この場でれいを言わせてくれ。……本当に、ありがとな」


「フフ、なんのなんの」


「……はじめまして里長様、和迩わに零子です。彼が――昌弥まさやがここへ来てから、ずっと見守っていてくださったそうですね。重ねて恐縮ですが、そちらの件についても深く感謝を申し上げます。あの人を導いていただいて、本当にありがとうございました」


 零子は頭を下げると、「これはほんの気持ちですが」と言って里長に手土産てみやげを渡した。それを満足そうに受け取った彼は、彼女を見つめて返答する。


「ありがたく頂戴ちょうだいする。……なるほど、そなたのような気立きだてのよい恋人が相手ならば、昌弥が尻込しりごみしていたのも俄然がぜん、腑に落ちるというものだ」


「まあ、お上手ですね里長様。……あの、それで彼は……」


「うむ。しか来ておるぞ(・・・・・)


 実は今日、リザードマンの集落で愛珠あいしゅ獲得のために働いていた昌弥が、こちらまで戻ってきているのであった。「今ならば零子と直接会える」――ノーストからそう聞き及んだ彼は、いま葛藤かっとうかかえつつも、自らの異形いぎょうを彼女にさらす決心をしたのだ。


「ただ、向こうの集落で落ち合っては一目ひとめで誰が自分なのかわかってしまうからな。本人たっての希望で、同じ風貌ふうぼうの者がつどうこの里が逢瀬おうせの場所に指定された次第。……あやつなりの、最後の悪あがきといったところだろうか」


「そうだったんですか……まったく、おうじょうぎわが悪いんだから昌弥は」


 眉をハの字にして笑う零子。その声音こわねは、心なしかいつもより上擦うわずっていた。


「……さて、水入みずいらずの再会を盗み見る趣味はない。われらはいったん退散とするとしよう。ガウラは古代魔法のことで、再び里長に相談があるのだったな?」


「そうじゃ。すまぬが、むろのほうで話を聞いていただけるじゃろうか」


「承知した」


「で、佳果よ。うぬの用事というのは……」


「ああ、わけあって結界まで行きてーんだけどよ。護衛ごえい頼めるか、ノーストさん」


「無論だ。一度ガウラ(こやつ)を送り届けているゆえ、要領は得ている。ではさっそく行動開始とゆこう」


 こうしてそれぞれの目的を確認し、早々に散ってゆく四名。

 残された零子は、こめかみを掻いてふうと息を吐いた。


(別に気にしなくてもいいのに……ふふっ、紳士しんしな人たちですこと)


 そのまま周辺をぐるりと確認してみると、たくさんの魔物たちが生活している様子が目に入ってくる。"人間上がり"と呼ばれる彼らは、大きな虫のような姿が特徴とくちょうだ。しかし虫が苦手な零子でも、不思議と嫌悪けんお感はなかった。


(あ――)


 そして即座に看破かんぱする。同じ外見をした者たちのなかに、見紛みまがうはずもない魂が混じっていることを。木陰こかげに隠れた彼のもとへ、零子はよどみなく、まっすぐ向かっていった。


「昌弥、あたしだよ。……久しぶりだね」

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