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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第234話 精霊の魂

 明朝みょうちょう、佳果は例のキーワードについて、こっそりとチャロに尋ねてみることにした。仮宿かりやどないはヴェリスが寝ているため、屋外おくがいの休憩スペースにて問答する。


「転生ですか。しくも昨晩、あの子に同じ話題を振られましたね」


「ん、そうだったのか? ……つってもまあ、俺の本命はあくまでウーを復活させる方法なんだけどよ」


「ウーさんを?」


「ああ。んでそこに転生が絡んでくるらしいところまではわかったんだが、正直さっそくどん詰まりになっちまってな。現状お前くらいしか頼れそうなやつがいねーんだ……すまんが、ちっとばかし相談に乗ってほしい」


「……ふふ、なかなか殊勝な心がけですね。わかりました、ではわたしの持っている知識を共有しましょう。まず手始めに、輪廻りんね転生の定義ですが――」


 チャロいわく、主に四次元以下で繰り返されている魂の時空移動、およびそれにともなった生命エネルギーの得喪とくそうを輪廻転生と呼ぶそうだ。すなわち、命の生誕せいたん死没しぼつの連鎖に同義である。


「その目的はただひとつ。愛の光を強めて功徳(グナ)を積み重ね、我欲がよく手放てばなして霊的負債(カルマ)をそそぐこと。どんな魂であっても、これを本懐ほんかいとして何度も生まれ変わりを実践しているのは揺るぎない共通項です」


「……この世界でいう、"エリア移動"と同じような趣旨しゅしってわけか」


「はい。ちなみに余談ですが、わたしやあなたも、太古たいこの昔は動植物だった時代があるのですよ? そこから悠久ゆうきゅうの時をかけて、無数の情緒を体験し、感情の発達とともに自由意志が獲得され、やがて人となっていった。……その先でこうした出会いが起きていると考えると、なんだか不思議な気分になりますよね」


 人差し指を立て、にっこりと蘊蓄ウンチクかたむけるチャロ。なお、一度でも人となった魂はそれ以降ずっと"人間"を繰り返すようになるらしい。その際、転生先は前世から±2000年以内となるケースが9割をめるのだとか。


「プラマイ? ……もしかして、過去に生まれ変わる場合もあんのかよ?」


「ええ。わたし達の感覚だと、時間とは未来に向かって常に一方向へと流れていますが……魂にそういったかせはありませんから。おのれの成長具合を考慮して、目的を果たすのに相応ふさわしい舞台が前時代であると判断されれば、えて遡行そこうを選ぶ場合も往々(おうおう)にしてあるわけです」


「ほ~……なあ、ちょっと気になったんだが。その"人間のループ"ってのに、終わりはあるのか?」


「ございますよ。グナとカルマが一定の水準に達すれば、輪廻の輪から外れます。もっとも……一度外れた魂が、わざと転生し直す例外もそれなりにあるようですが。まあ今それはいったん、横に置いておきましょうか」


 彼女は水分補給して一呼吸おくと、続けて本件における重要ポイントを指摘した。


「――さて、おそらく今回肝要(かんよう)となるのは、転生が適用される魂の範囲が"四次元以下"という点でしょう。なぜならば、そこには精霊の魂も含まれているからです」


「! ……それってつまり、ウーも転生できるってことか!?」


「そうとらえて差し支えないかと。そして精霊の魂は、人のそれと違って転生時に必ず記憶を保持すると聞きます。よってウーさんが転生に成功すれば……わたし達のよく知る彼に、もう一度会える可能性は高いと言えますね」


「……はは、マジか……! 見えてきたぜ、一筋の光明こうみょうってやつが……!」


「ふふ、わたしもけるならそこにしぼるべきだと思いますよ。ただ……ひとつ大きな問題がありまして」


「な、なんだよ?」


「輪廻転生システムの背後には、上位誠神(せいしん)の存在がある。よって彼らに接触できない限り、こちらから転生に介入するすべがないのです」


「上位誠神……」


 佳果は先日、四柱よんちゅうの神々が顕現けんげんした場面を思い出した。あの時は確か、ホウゲンが次元を押し上げてくれた影響で宇宙空間に共存できたものと思われるが――あれを自分たちで再現するのは不可能だろう。文字どおり次元が違いすぎるのだ。


「くそっ……もう太陽の雫はなくなっちまったしよぉ。俺ら人間が上位誠神に近づく方法なんて、なんにも思いつかねーぞ……」


「……わたしに妙案があります」


「?」


「あなたの言うとおり、我々は基本的に上位次元に対してすこぶる無力むりょくで、干渉の余地などありません。しかし……たった一名だけ、その足掛かりとなりる存在を知っている」


「そいつは一体、誰のことを言って…………あっ」


 浮かべた肖像しょうぞうが不敵に笑う。佳果たちが唯一、自分の足で会いにゆくことのできる神――それは、魔神ましんムンディに他ならなかった。

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