表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
240/356

第232話 ぜひ根を詰めて

「「ごず……?」」


 はてなを浮かべてハモる佳果とシムルに、ゾグは苦笑した。


《クハハ、まあ若いのが知らんのも無理はない。ひとまず吾のことは適当に、ゾグと呼び捨てるがええぞ。……さておき坊主。さっき、あの粒子精霊が戻ってくる保証はないと言っていたな。あれはどうしてだ?》


「! ……そりゃ……だってあいつ……消えちまったんだぜ? 俺たちを"正しい時"に送り出すために、ありったけのエネルギー振りしぼってよ……」


(……兄ちゃん)


 伏し目がちに悲しみを吐露とろする兄の背中を、シムルは無言で見つめた。


「――けど、今日きょう知り合いと話しててひとつ気づいたことがあった。魂ってのは不滅なんだろ? ならウーも……実際には消えたわけじゃねぇのかもって、そう思ったんだ」


《……なるほどのう。それで明虎に接触を》


「ああ。零気れいきが使えるあんたなら、何か詳しい情報を知っているはずだからな。……本当はこの後にでも、改めて連絡するつもりだったんだけどよ」


 そう言って湯船から上がり、明虎に近づいて正座する佳果。

 彼は真剣な顔で嘆願たんがんし、頭を下げようとした。


「頼むよ明虎。俺は……俺たちは、もう一度ウーに会いたい。このとおりだ。どうかあいつに関する情報を――」


ことわる」


「!」


「ちょ、ちょっと明虎さん! それはいくらなんでも……!」


 兄の誠意を一蹴いっしゅうした明虎に対し、シムルが思わず非難を浴びせる。しかし彼は顔色ひとつ変えずに答えた。


「まったく……兄弟(そろ)って勘違いもはなはだしい。よいですか。今回、頼みごとをしているのはあくまで私なのですよ(・・・・・・)。あなたがたに依頼される筋合いなどない」


「!?」


「最初に言ったでしょう、零気を取り戻していただきたいと。それには当然、あの精霊の存在が不可欠となる。少し考えればわかることだと思いますがねぇ」


「そ、それって……?」


《クク、つまりな。元よりこの男は、坊主たちに協力するつもりでここへ来たわけよ。……ただ、諸事情で当の本人があまり口をきけないようだからの。以降の話はわれ代弁だいべんしてやるとしよう》


 ゾグがおもむろに宙へ浮かび上がる。同時に彼の身体は黒とオレンジが基調の条帛じょうはく――よく仏像が着ているような衣装を身にまとい、背中には小柄な体格に不釣り合いなほど大きな剣と杖が出現した。

 彼は不敵に笑うと、かいた胡座あぐら頬杖ほおづえをついて言う。


《……さて、結論から述べるぞ。おぬしにらんでいるとおり、粒子精霊は特段(とくだん)消えたわけではない》


「マ、マジか!? なら、いったいどこへ!」


《彼は"正しい時"に化けた。すなわち、この星魂(アスターソウル)における時空の一部になったんだわな》


「時空の一部……?」


《ああ。そしてわかっているとは思うがの。もし無理に連れ戻そうとすれば、お主らがやっとの思いで辿り着いたこの時空は――バランスを失い、いとも簡単に崩壊ほうかいしてしまうだろう》


「そ、そんな……でもゾグ、ウーはおれ達の大切な家族なんだっ……どうにかして、どうにかして助けることはできないのかな……!?」


 瞳をうるませ、せつうったえかけるシムル。

 その様子にゾグは目を細め、深い眼差しをって答えた。


《もちろん方法はある》


「!」


《ただし。それをおこなうには、あの粒子精霊とつよい絆で結ばれている坊主自身が、能動的に"とある真実"を追い求めてゆかねばならない》


「……とある真実……俺が、自分の意志で……」


《うむ。といっても、何のことはないぞ? お主は今までもずっと、そうやって道を切り拓いてきたはずだからの。さしていつもと変わらんから安心せい》


「あ、ああ……?」


「……ではそろそろ、我々は失礼するとしましょう。阿岸佳果くん。キーワードはずばり転生(・・)です。あとは自力でがんばってください。そうそう、期限は明日いっぱいなので、ぜひこんを詰めて、無茶をしでかしながら奔走ほんそうするように」


「へっ……はぁ!? おい、なんだよそりゃ――」


 最後に爆弾を投下した明虎は、ゾグとともに湯けむりの中へと消えていった。残された兄弟は互いに目を見合みあわせると、脱力してドボンと湯船に沈み込む。

お読みいただき、ありがとうございます!

もし続きを読んでみようかなと思いましたら

ブックマーク、または下の★マークを1つでも

押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ