表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
239/356

第231話 牛頭天王

「…………」


 絶句する兄弟をよそに、明虎あきとらはじで湯船に浸かりながら言った。


「単刀直入にお伝えしましょう。YOSHIKA――いや、阿岸佳果くん。あなたにはきゅうてきすみやかに、零気れいきを取り戻していただきたい」


「!」


 零気という単語を聞いて硬直する佳果。

 その様子に、シムルはなんとなく思い当たる節があった。


「そういえば兄ちゃん、昼間に明虎さんとコンタクトを取りたいって言ってたけどさ……もしかして、ウーに関係あることなの?」


 図星ずぼしをつかれ、佳果は頭に乗せていたタオルで顔をおおった。


「……だぁ、こっちは色々と気ぃつかってたのによ。あんたのせいで台無しじゃねーか」


「気を遣う? 一体なんのです」


ウー(あいつ)が戻ってくる保証なんてどこにもないだろ? ……期待させるだけさせといて、もしダメだったら申し訳が立たねぇ。だから裏でこっそりあんたと接触して、まずは可能性だけでもさぐろうと思ってたんだが。お陰で計画が狂っちまったぜ」


(兄ちゃん……そうだったのか)


「ふむ」


 明虎は佳果のやるせなさそうな態度を一瞥いちべつすると、ゆっくりと目を閉じた。そうして浴槽よくそうのふちに頭と両腕を乗せ、天井のほうへ向かってつぶやく。


「だそうだ。ゾグ、私は自由意志の観点かんてんから助言するのが難しい。君から話してやってくれないか」


《わ、われがかぇ? でもこれは人智じんちを超えた領域の話――別におぬしが導いたところで、侵害には当たらんと思うがの》


「私はこれ以上、カルマのリスクを負うわけにはいかないのだ。頼む」


《……もっともらしいことを言いおってからに。本当は面倒なだけじゃなかろうな》


「おい、なに一人でぶつくさ言ってやがる」


 突如として独り言を始めた明虎に食ってかかる佳果。

 しかしシムルは、彼の腕を引っ張ってそれを制止した。


「待って兄ちゃん。この感じ……昨日の戦いでも同じ場面があった気がする。あの時はそう――明虎さんが何かを独りごちた直後に、"絶対拘束"が発動したんだ」


「!? ……言われて思い出したが、そういやあんた……どさくさに紛れて、確かにあのクイスの野郎の固有スキルを使ってたよな。まさかとは思うが、他人のスキル盗んだりできるのか?」


 にわかに不信感をつのらせ、警戒モードへ移行する兄弟。

 彼は小さくため息をつくと、湯をいて肩を濡らした。


「ほら。君がまごつくから、あらぬ容疑ようぎを掛けられてしまったではないか。はやく説明したまえ」


《いやいや、どう考えてもお主の日頃ひごろのおこないが…………は~、まあよいわ》


 ボフンという音とともに、見知らぬ子ども――否、そう見えるだけで年齢不詳と取れる謎の人物が現れる。ノーストやホウゲンよりは小ぶりだが、またしても頭部に二本角が生えている鬼のような容姿。緋色の髪はミディアムパーマで、左側のモミアゲから赤絹あかぎぬふさが肩にかかるくらいれている。端正たんせい童顔どうがんは極めて中性的、かつその表情はいも甘いもみ分けているかのごとく、哀愁あいしゅうを帯びていた。


《よお、坊主ぼうずたち。吾は、ゆえあってこの胡散うさんくさ~い男に協力しておるゾグと申すものだ。立場を言葉であらわすなら……精霊、ほとけ、神。そのすべての要素をあわせ持つ、てんのうという存在に当たるのう。以後、よろしく頼むぞ!》

お読みいただき、ありがとうございます!

もし続きを読んでみようかなと思いましたら

ブックマーク、または下の★マークを1つでも

押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ