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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第230話 湯けむりのなかに

 その日の夜。さいわい大きなトラブルもなく初日の頒布はんぷを終えた陽だまりの風は、明日に備えて早めに解散する運びとなった。誰でも簡単に魔獣を遠ざけることのできるお洒落しゃれな魔除け――くだんのアクセサリーはすでに世界中で話題となっている。ひとまず計画の滑り出しは順調といってよいだろう。


「おーっす、ヴェリス。お疲れ」


「ふふ、熟練度上げの進捗しんちょくはいかがですか?」


 ラムスの仮宿かりやどにて、くったりとテーブルにつっ伏していたヴェリスのもとにシムルとチャロが瞬間移動してくる。彼女は顔を上げると、ぷるぷると痙攣けいれんする腕で力なくガッツポーズしてみせた。


「ん、もうちょっとで最大値。これで明日からアーリアと零子の負担が減る」


「おお、よくがんばったな!」


「偉いです、ヴェリスさん! ……しかし、見たところかなり疲労が溜まっているご様子ですね」


「そう? ……でも、二人も疲れた顔してるみたい」


「ま~なんだかんだで一日中動いてわけだしな」


「ふむ――ではわたしに良い考えがあります!」


 そう言って嬉しそうに、とある提案をするチャロ。

 彼女の言葉を聞いて、双方の表情がたちまち晴れ渡ってゆく。



「んで、ここに来たってわけか」


 実家で父ゼイアと雑談していた佳果は、ヴェリスたちに引き連れられて『せせらぎの湯』までやってきた。ここはかつて楓也、アーリアとともに入ったことのあるアラギの名湯めいとうだ。


「おれ、皆の話を聞いてすごい気になってたんだ! 早く行こうぜ兄ちゃん!」


「わかったわかった、慌てんなって」


 手を引かれるまま男湯に消える佳果。

 いっぽうチャロは、のれんを見て何やら感慨にふけっていた。


(懐かしい……むかし夕鈴ゆうりやフルーカと入ったとき以来でしょうか)


「どうしたの? わたしたちも行こっ、チャロ」


「ええ、ゆっくりくつろぎましょうね」



 脱衣を済ませた兄弟は、改装によってさらに(おもむき)の増した和風の内装をひとしきり堪能たんのうした後、身体を洗ってから湯船ゆぶねに身体を沈めた。


「あ゛~~、これが温泉……!」


「かか、思い切り羽を伸ばしてやがんなシムル」


「そりゃあこんな極楽、こうもなっちゃうでしょ! というかました顔してるけど、兄ちゃんだって本当はやりたいくせに」


「ぐっ……いやしかし、兄の威厳いげんってもんがだな……」


「なーに今更いまさらかっこつけてんだか。ほら、他に誰もいないんだし気にしなくていいって」


「そうか? じゃ、じゃあ遠慮なく」


 こうしてはばかることなく、おっさんめいた声を上げる二人。目を閉じて全身に心地よい暖かさを感じていると、ふと背後に気配がした。


(……? なんか視線を感じるような……って、んなわけあるはずねーか。ここは今俺らのパーティが貸し切り状態で入って――)


「……あなたがた、まだお若いというのに。さながら草臥くたびれた中年の貫禄かんろくですね」


「!?」「なっ!」


 突然の声に驚き、顔に湯をかぶって咳き込む兄弟。彼らが立ち上がって振り返ると、そこに居たのは果たして、シルバーアッシュの長髪を束ねたこの男であった。


「あ……明虎あきとらぁ!?」


「さて、大事なお話があります。ここは裸の付き合いとまいりましょうか」

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