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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第229話 愛をやわらかく

 その頃、ラムスの工房にて。

 魔除けの量産をおこなうアーリアと零子の横で、"加工"の熟練度上げをする佳果、楓也、ヴェリスの姿があった。彼らは作業しながら、昨日の会議内容を振り返っている。


「"本当のエピストロフ"か……結局のところ、エリア(10)への移動が必須なのは変わらねぇってチャロは言ってたよな」


「うん。そのために、ぼくたちはまずSS(9)を目指すことになるわけだ」


「SSⅨ……身近な人で挙げるなら、お姉さまとガウラさん、フルーカさんに夕鈴ゆうりさんがいらっしゃいますね」


 三人の会話を聞いて、ヴェリスはそれぞれを思い浮かべてみた。みんなきらきらで、ほわほわで、あったかい感じがする人物ばかりだ。そのイメージは佳果にとっても同じだったらしく、彼は気の抜けた顔で微笑びしょうし、ふうと一息ついた。


「ま、今ならわかるぜ。そういう雰囲気(・・・・・・・)ってーの? なーんか自然とせられちまうんだよなぁ」


「あはは、ぼくたちもそうなっていくって考えると、ちょっと不思議な気持ちになるよね」


「あたしがお姉さまと同じステージ……! ……あれ、途端とたんに恐れ多い気がしてきました」


「も、もう、零子ちゃんったら……心配しなくても大丈夫ですわ。みなさんにできること、みなさんにしかできないこと――それを懸命けんめいに追いかけてゆけば、すぐに辿り着けるはずですから」


 アーリアがにっこりと微笑ほほえむ。SS(8)になるためには、愛のあたえかたが柔軟でなければならなかった。そして(9)になるためには、あたえる愛そのものをやわらかくする必要があるそうだ。ヴェリスは、そのあとにチャロが続けた言葉を思い出す。


『愛をやわらかくするには、その人にとって最もふさわしい"自己表現"をとおして世界に奉仕するのが大切です。わたしの場合は色んなアイテムを組み合わせ、新しいものをつくって人々に提供していましたが……皆様には皆様のやり方が必ずあります。まずはそこを静かに見つめ直し、自覚するところから始めてみてください』


(わたしのやり方……わたしにしかできないこと……)


 考え込むヴェリス。他の三人も年相応に悩んでいるようだ。


(俺は……たぶん、もう自分のなかで答えが出てる。それを証明するためにも……とにかく今は、ウーのやつを連れ戻さねーとな)


(ぼくの自己表現はもちろん演技だ。……久しぶりに劇場のほうへ顔を出しておこうかな)


(あたしが持っている"占術"というアイデンティティー。でもこれを活かすためには、きっと――)


 真剣な眼差しの彼らに、アーリアは人知れず目を細める。


(……ふふっ。わたしたちも昔、よくこんな感じにうなっては議論を交わしていたわよね。どうやったら世界に笑顔が増やせるか…………ねぇ奈波ななみ。わたし、あれからファッションデザイナーになったよ)


 目を閉じれば、鮮明によみがえる親友の笑顔。もうじき彼女の命日だ。そろそろ一度、墓参りに行っておきたい気がする。アーリアはゆっくりと視界を戻すと、はかなげな表情をふっといつもの笑顔に変えて言った。


「さてさて、いったん休憩にしましょう! ナノさんがクッキーを焼いてくれていますから!」

お読みいただき、ありがとうございます!

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