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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第227話 胡乱な提案

明虎あきとらさんだよ、零気れいきを使ってたのは」


 アスター城にやってきた佳果。

 彼の質問にそう答えたシムルは、かんぐるように続けた。


「けど、それがどうかしたの? 兄ちゃん」


「ん? ああ……ちょっと確かめたいことがあってよ」


 咄嗟とっさに言いよどんでしまったのは、ウーとの再会が果たして現実的な話なのかどうか、まだ確証かくしょうを持てないからだ。ぬか喜びさせるのは忍びないため、光明こうみょうが見えるまでの間は仔細しさいせておくことにする。


「とりあえず、俄然がぜんあいつと話す必要が出てきた。忙しいところすまんが、連絡()ってみてくんねーか?」


「……わかった。いま念話を飛ばしてみる」


 兄が何か大切な案件をかかえていると看破かんぱした彼は、特に詮索せんさくせずに"月の視点"と共鳴し、テラリウムの瞳となった。ところがアスターソウル内をくまなく探すも、明虎の魂はどこにも見当たらない。


「あれ、今はないっぽいや。まーた別の次元でもフラフラしてるのかなあ」


「タイミング悪ぃな……まあ居ないもんは仕方ねぇ。そんじゃ明虎あいつが戻ってくるまで、俺も仕事を手伝わせてもらうぜ。計画の進捗しんちょくはどんな感じだ?」


 佳果の言う計画とは無論、魔除け(フィラクタリウム)普及計画のことである。


 実は昨晩、すでに"加工"の熟練度が最大値に達しているアーリアと零子の尽力によって、ある程度の量産体制がととのったため、ヴェリスが"世界の光"を通じて人々の潜在意識――つまり夢に働きかけ、具体的な頒布はんぷ情報の伝達をおこなったのだ。そして現在、シムルは瞬間移動を使ってラムスからこの王城へと現物を運び入れ、フルーカの国璽こくじ付与が完了次第、かくまちに設置された出張所へ供給している最中だった。


「んーと、今あっちの部屋でチャロ姉ちゃんが頒布状況の確認と演算をやってくれてるんだけど、けっこう順調みたいだよ。……そうだなあ、兄ちゃんが手伝うなら、やっぱりラムス(あっち)に戻って、アーリア姉ちゃんたちに加勢するのがいいと思うぜ」


「了解だ」



「お初にお目にかかります、くみちょう殿どの


 いっぽうとう使ぐみの事務所内。刻限こくげんになると同時に、黒のチェスターコートとシルクハットを身につけた背の高い男が、アタッシュケースを持って拓幸の前に現れた。不審ふしんを絵に描いたような交渉相手の登場に、彼は警戒心を強める。


「……おう、まあ座ってくれや」


 男は「では失礼」と言ってハットを取り、来客用のイスに着座ちゃくざした。シルバーアッシュの長髪、眼鏡めがねをかけた素顔があらわとなる。彼は向かい側に拓幸が腰かけた瞬間、張り付いたような笑顔で言った。


「それで……受けていただけるのでしょうか?」


「やれやれ、直球だなあんた……これじゃ駆け引きもクソもないぜ。せっかくマズい飯まで食って準備してきたっつうのによ」


「フフ。あなたこそ、噂にたがわぬ実直さであらせられるようで」


「くだらん世辞せじはよせ。さておき、さっそく聞かせてもらうぞ? ……なんでこんな依頼をよこした? 病院から個人情報なんざ盗ませて、どうするつもりだ」


 拓幸がすごむと、その男――波來明虎は再び笑った。


くみちょう殿どの。ちょっと一緒に、世界でも救ってみませんか?」

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