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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十三章 献身の美醜 ~それぞれにできること~
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第221話 記憶

「いいところだな」


 山あいにある旅館の座敷ざしきで、庭園ていえんを眺めながら茶を飲む佳果。あの死闘から一日――現実世界で福岡に滞在中の四人は、せっかくの機会ということもあり、零子のすすめでここにもう一泊する運びとなったのであった。寿司を幸せそうに頬張る楓也は、しみじみくつろぐ彼に視線を向ける。


「もぐもぐ……こくん。本当だ、雰囲気のある庭だねぇ。ほらヴェリス、見えるかい?」


「んとね……うん、見える。これ、前に佳果がいた場所に似てるね」


 勲章くんしょう越しに楓也の視点とシンクロした彼女は、以前二人が修学旅行で泊まっていた宿を彷彿ほうふつとした。隣のシムルも興味深そうに見入みいっている。


「すごいなぁ。うまく言えないけど、自然をうやまっているのが伝わってくるよ」


「こうしたおもむきは、あちらの世界にしかない文化ですね。わたしも実際に肌で感じてみたいものです……皆様や、夕鈴ゆうりといっしょに」


 チャロの言葉で、全員のはしが止まった。

 浴衣ゆかた姿の椰々(やや)と零子は、互いにうなずくと彼女に尋ねる。


「そのことなんですけれども。この場で一旦いったん、情報を整理しておきませんか?」


「あたし、かんはそこそこ良い方なのですが……その、頭の回転はあまり速くないので。できれば色々と教えてほしいです、お願いしますチャロさん!」


 苦笑して頼み込む零子に、チャロは「よろこんで」とこころよく答えた。

 すると思案顔になった楓也が、あごを触りつつ質問する。


「昨日、押垂おしたりさんと再会したとき……彼女は記憶を保持していました。状況から察するに、あれは白竜のなかに入っていたホウゲンというまがかみ様が関係しているんですよね?」


「おそらくそのとおりです。ムンディいわく、夕鈴は禍津神の守護を受けていた――いつわりのエピストロフによるカルマで地獄に飛ばされ、異形いぎょうとなった彼女は、アビヒの森でトレチェイスに愛の全放出をほどこしました。そして本来ほんらい記憶を代償だいしょうとするあの儀式にさいし、の神は"黒"ではなく"白"のエネルギーを使っています。つまり……」


「表面上は暗黒神の目をあざむくために封印していたものの、実際には記憶を失ったわけではなかった……禍津神様が守っていたというわけですか」


「そう考えるのが妥当だとうでしょう」


「なるほどな……しっかしあいつ、いつの間に神の守護なんて得ていたんだ? 生前せいぜん、そんなようなことは一言ひとことも…………いや、待てよ」


 何かに気づく佳果。椰々も以前、彼から聞き及んだ話をすぐに想起した。


「夕鈴ちゃんと禍津神様の縁が結ばれたタイミングですか……思い当たるとすれば、佳果さんが十二歳の頃にさいなまれていた魔神による心身への深刻な悪影響。それを取りはらうため、人の痛みを受け取れるようになったという彼女が言っていた"お願い"でしょうか」


「ええ、間違いないかと。なにせ、箱舟はこぶねの設計図とともに夕鈴の手紙が入っていたタイムカプセル。あれが埋まっていた神社の祭神さいしんに、禍津神が含まれていますからね。彼女は当時、あそこへ"お願い"をしに行ったものと思われます」


「ほぇぇ、珍しい神社ですね……! あたしなら好奇心で本庁ほんちょうに問い合わせちゃうレベルかも!」


「そ、そこまでか? すまん、まったく気にしてなかったぜ(つか、ホウゲン(あいつ)と初対面の気がしなかったのってそういう……)」


「あはは。何にせよ、そのおかげで押垂さんは助かったってことだよね。もっとも、超感覚って弊害へいがいもあったわけだけど」


(超感覚……)


 ヴェリスは昨日見た夕鈴の姿を思い浮かべる。あのとき感じた強い魂のつながりと、『神々はあなたを選んだ』という言葉の意味。そして自分が彼女と同じ超感覚を持っている理由――あれこれ考えるヴェリスの横で、シムルが次の疑問を口にする。


「助かったと言えば、だけどさ。夕鈴姉ちゃんは、霊界って次元に行ったんでしょ? そこって結局どういう場所で、どうしてかえらなくちゃいけなかったんだ?」


「実はぼくも気になっていました。ちらっとウーから聞いたことはありますが……チャロさん。詳しく教えていただけませんか」


「承知しました。わたしの知っている範囲でご説明しましょう」

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