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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第219話 四柱の神

 するすると黒い霧が抜け出て、塵芥じんかいと化すアパダムーラの(コア)。いっぽう白竜も粒子となって蒸発し、内部からはやはり黒い霧が噴出ふんしゅつした。双方の霧は混ざり合いながら上昇すると、闇のエネルギー体へと姿を変える。そのすぐそばには、気を失った夕鈴ゆうりとトレチェイスの身体が浮かんでいた。


「あれは……!!」


「ようやくお出ましだねぇ」


 驚くチャロの横で、いつの間にか戻ってきた明虎あきとらがエネルギー体――黒幕の上位魔神をにらみつける。彼の言葉を聞き、他の面々にも緊張が走った。


「あいつが元凶の……!」


「どうしよう阿岸君……押垂おしたりさんたちは、まだ敵の手中しゅちゅうみたいだよ!」


 ぐったりしている二人が闇に飲み込まれ、徐々に見えなくなってゆく。彼女らの身体が再構築されたということは、本作戦は成功だ。しかしこのまま奪還できずに終わってしまえば、すべてが水泡すいほうす。


「くそっ、このに及んでまだ姉ちゃんたちを苦しめる気なのか……!?」


「……お願い、二人を返して!」


 ヴェリスの嘆願たんがんに、上位魔神が反応する様子は見られない。しびれを切らした佳果は、けわしい表情をしてその場を飛び出そうとする。


《待て佳果》


 それを止めたのは、鬼のような姿をした美丈夫びじょうふだった。ノーストと同じく角を生やし、金色の混じった銀髪が逆立っている。身体は黒い衣とマントに覆われ、佳果は見慣れぬ人物であるはずなのに、なぜか初対面である気がしなかった。


「あんたは……」


《案ずるな、これでしまいにする》


 彼は一歩前に踏み出し、神気を使って周囲の次元を一時的に押し上げた(・・・・・)。瞬間、佳果たちは宇宙空間に投げ出され、まるで星空にとけて同化しているような感覚に包まれる。


《……これでお前たちも顕現けんげんできよう。さあ、けりをつけるぞ》


 その言葉と同時に、明虎が謎のちからで時空へ裂け目をつくると、中からムンディと黒龍が現れた。さらに佳果の手元からは太陽の雫が浮かび上がり、人のかたちへと変化してゆく。やがて現れたあま羽衣はごろもまとった清らかなる存在は、見ただけで太陽神であると確信できるほど、無二の美しさと神々(こうごう)しさをともなっていた。


 場には莫大ばくだいなエネルギーが充満し、佳果たち一行いっこうはあまりの気迫に圧倒されて、喋ることも、身動きすることもできなくなってしまった。それをよそに、ムンディがいつもの調子で頭蓋骨をかく。


《いやー、どっかで関わっているとは思っていたけどな。ホウゲン、まさかまがかみになったあんたが、堕天だてんして夕鈴ガールの守護をやっていたとは》


《おかげで座標がずれて、危うく捕捉ほそくが叶わなくなるところであった。明虎(かれ)の機転で事なきを得たが、なぜあらかじめ連絡してくれなかったのだ?》


《……久しいな、ムンディにクルシェ。実は魔獣と融合させられた際、夕鈴の魂を守るのと引き換えに、奴のエネルギーが侵蝕しんしょくしてきてな。先刻まで意識を改ざんされていたのだ》


《! あんたですら抗えなかったのか……さすが、七次元(・・・)は格が違うらしいな。しかし俺様も上司と対面するのはこれが初めてだが、ここまでエネルギーの絶対量が違うと、もう笑うしかないって感じだぜ。なあスーリャ》


《……暗黒あんこくしん殿》


 ムンディの問いかけを華麗かれいに無視し、太陽神は時間軸移行が発生したあの時と同じ声色こわいろで、闇のエネルギー体――暗黒神に呼びかける。


《この場に在る、すべての御魂みたま明暗めいあんが我々の……星魂(アスターソウル)の答え。もう十分じゅうぶんではなかろうか》


 彼女の言葉を聞いて、暗黒神は無言のまましばらく揺らめいていた。だが次の瞬間、おもむろに夕鈴とトレチェイスをこちら側へ移動させると、なんと闇から解放してみせた。そうしてすべての次元からあまねく()を回収したその存在は、《安寧あんねいを》と一言だけ発し、音もなく消えてゆくのだった。


 残されたよんちゅうの神は、互いに顔を見合わせる。


《……あれ? もしかして今ので終わりか? 俺様とクルシェ、玉砕ぎょくさい覚悟で色々と考えてあったのに……》


《ふふ、どうやら……こちら側の在りかたが認められたようだ。彼らの尽力が、奇跡を――必然を勝ち取った》


 そう言って陽だまりの風を見つめ、微笑ほほえむクルシェ。

 続けてホウゲンが口を開く。


《……まだに落ちぬことも多いだろう。だが、向こうへ戻ればおのずと視えてくるはず。……これからお前たちは、最後までアスターソウルを導け。幸せは、その先にこそ存在する》


《また相まみえる日がいつになるかはわからないが、私たちはいつも見守っている》


らの健闘を祈る。此度こたびは――天晴あっぱれであった》


 太陽神が、まさに太陽のごとき笑顔を見せた瞬間。

 次元は元に戻り、佳果たちはアスターソウルの世界へと帰還した。

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