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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第215話 白竜襲来

 ――少し前、E地点にて。


 固有スキル《ニスカーサ》によるヘルプ参照や"書庫"の利用を通し、これまでアスターソウルについて勉強し続けていたフルーカは、その成果の一つとして、現存する全ての補助魔法を行使するという破格の支援をやってのけた。


 極限まで能力を高められた陽だまりの風と魔物たちは現在、弱体化したアパダムーラ本体と対等の勝負を繰り広げている。途中、消耗した佳果が補給のため後方こうほうまで下がってきた。ガウラが「これを使うんじゃ!」と言って回復アイテムを手渡すと、彼は息を切らしながら言った。


「はぁ……はぁ……サンキュー! しっかしあいつ、ここまで食い下がんのかよ! こっちはこんだけバフ盛ってて、多勢たぜい無勢ぶぜいだっつーのに!」


「ええ、流石さすがは黒幕の上位魔神が生み出したとおぼしき魔獣ですね。依然として一筋縄ではいかないようですが……あたしも攻撃魔法で援護えんごしますので、皆で力を合わせてなんとか乗り切りましょう、佳果さん!」


「……ああ! ところで零子さん、明虎あきとらのやつはどこ行ったんだ」


「へ? あらら、さっきまでそこにいたのですが……」


 周囲に見受けられるのは、効果時間の切れた魔法を懸命けんめいに掛け直しているフルーカとチャロの姿だけだった。このタイミングでいなくなったということは、何か重要な行動を起こしているのかもしれないが――。


「やぁああ!!」


 不意に、奮闘ふんとうするヴェリスの声が聞こえてくる。当初の予定どおり、マイオレムを行使した彼女は疾風しっぷう迅雷じんらいの立ち回りで防御無視の攻撃を敵に浴びせ続けていた。まとっているオーラは白く、ときおり従来じゅうらいの黒と赤、そして青がほとばしっている。すぐ近くで戦闘中のアーリアは、その様子を一瞥いちべつして思考をめぐらせた。


(そういえば以前、アラギの温泉で……ヴェリスちゃんはあれらが『わたしの深いところから出てるみたい』と言っていましたわね。でも先ほどの"いびつな時"で、あんな白いオーラは出ていなかったような――)


 彼女がそう思った矢先やさきである。視界のはしに、山の向こうから超スピードで飛んでくる白竜が映った。その強大なプレッシャーを感知し、場にいる全員が空をあおぐ。このたんで最悪の事態が訪れ、佳果は戦慄せんりつした。


「……マジかよ……あいつが来ちまったってこたぁ……」


「そんな……ノーストさんっ!!」


 餞別せんべつを受け取った際に見た彼の優しい表情がよぎり、愕然がくぜんと膝をつく零子。しかしすぐにチャロが異変いへんに気づいた。


「! いいえ、ノーストは生きています! 白竜の頭部をご覧ください!」


 言われるがまま凝視ぎょうししてみると、なんと白竜の角をつかみ、さながらそうじゅうのごとく搭乗とうじょうしているノーストが確認できた。そして地上で驚いている一同を、彼らもまた捕捉ほそくする。


「見えたぞ! あそこだ!」


『案内ご苦労くろう。……でかしたぞ。核の分離は既に、お前の仲間たちが成功させたようだな。これならば神気を使うまでもなさそうだ』


「そうか……! よし、ではわれは皆を退避させる。あとは頼んだぞ」


『ああ』


 白竜とすり合わせを終えたノーストは、転位魔法で一足ひとあしさきに現場へ到着し、続けて前線に出ていた者たちを問答無用で後方に下げた。急変する戦況に、混乱をいられる一同。


「!? ノーストさん、これ一体どういう状況――」


「話はあとだ! せろ!」


 シムルの言葉をさえぎり、彼がそう叫んだ次の瞬間である。白竜は鉤爪かぎづめによる攻撃でアパダムーラの本体を切り裂き、そのままほうむり去った。伴って凄まじい風が周囲に吹き乱れ、全員が顔をおおい隠すさなか。上空へ急上昇し、くるりと一回転した白竜が、今度は核へ向かってダイブする。


「あ……!」


 一瞬だけ時が止まったような感覚があった直後、薄目うすめで状況を確かめた佳果の瞳に、こちらへ吹き飛んでくる楓也が映った。その身体をあわててキャッチしたところで、白竜のものと思われる声が脳内に響き渡る。


『今だスーリャ(・・・・)! 力を解放しろ!』


 刹那、佳果の持っている太陽の雫がまばゆく輝き始めた。

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