表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
222/356

第214話 もう一度

「阿岸君!」


 駆け寄ってくる楓也。先ほどガウラから『その場で待機』のハンドサインを受け取っていた佳果とアーリアは、(コア)を警戒しつつみなの動向を気に掛けていた。彼が来たということは、次の作戦が決まったのであろう。


「おー、話がまとまったみたいだな」


「楓也ちゃん、わたくし達はどう動けばよろしいでしょうか?」


「はい。まもなくアパダムーラ本体との総力戦が始まると思いますので、お二人はひとまずそちらに参加してください」


「ん、核のほうはどうすんだ? 今のところ特に奪還だっかんしにくるような気配けはいはねぇけど、せっかく引き離したのに、このまま放置ってわけにも……」


「そっちはぼくが担当するよ。今から瘴気しょうきに触れて、中にとらわれたトレチェイスさんを探してくる。波來ならいさんいわく、これは魔境で彼や押垂おしたりさんと会っているぼくじゃないとつとまらない役らしくて」


「……なるほど、そういう感じか。ならお前に任せるぜ。俺たちは核の周辺に攻撃がいかないよう注意しとくから、集中して捜索そうさくするといい」


「ありがとう、心強いよ!」


「……どうかお気をつけて。あなたに何かあったらわたくし……また少々、無理をさせていただくかもしれません」


「そ、それは絶対ダメです! ヴェリスをかばってされちゃったとき、ぼくそのまま心臓止まるかと思ったんですからね!?」


「うふふ、でしたら無事に帰ってきてください。約束ですわよ?」


「……はい。必ず」


 彼女と指切りを交わした楓也は、そのまま魔をまとって核に近づいていった。

 漆黒のきりが彼の意識を受け入れ、精神世界へといざなう。



 核の内部は、かつて(とう)使ぐみた領域とも、世界悪意にまみれた時の光景とも違っていた。眼前に広がるのは、果てのない"無"。音も光もない空間のなかで、楓也は今までに感じたことのない狂気が侵蝕しんしょくしてくる感覚をおぼえた。ここでは己という存在が、一秒ごとに溶け出して曖昧あいまいになってゆくのだ。


(……大丈夫)


 自分にそう言い聞かせる。これは結界のそばで魔物化しかけた際に起こった自我じが崩壊とは性質が異なる。信じるものを想起そうきして、心を――魂を見失わなければ、きっと乗り越えられる闇に違いない。そんな直感に従い、彼は音の無い声で叫んだ。


「ぼくは青波楓也! 阿岸君の親友であり、彼や押垂おしたりさん、陽だまりの風を愛する高校生プレイヤー"もぷ太"だ! それは、それだけは……どんな時だって変わることはない!」


 すると思い浮かべた皆から絆の糸が伸びてきて、彼の魂に繋がり、不可侵ふかしんの光をともした。"無"に仄暗ほのぐらさが生じ、音もわずかに戻ってくる。同時に、背後はいごから視線を感じた。


「あなたは……」


 振り返った先でうずくまっていたのは他でもない、トレチェイスだった。

 彼は不意にやってきた楓也の光に当てられ、目を見開いている様子である。


「誰……だ……? その……輝きは……知って……いる……ような……」


「トレチェイスさん。あの時は助けていただいて本当にありがとうございました。おかげでぼく、こうして人間に戻ることができましたよ」


「……? トレ……チェイス……どこか……懐かしい……響きだ……」


「ぼくはあなたに、心から感謝しています。もちろんジェフィーラ(・・・・・・)さんにも」


「……!」


 刹那せつな、トレチェイスの意識は楓也のなかにある巨大な真っ白のたまを認識するに至った。あれは確か、自分がもらい、返しそびれ――そして結局、二人で力を合わせて獲得かくとくし直したものだ。


(……二人? 誰と? ………そうだ。あの人間にその名をつけたのは……おれっちだった。お前とおれっちは根本的に違うけど……もしかしたら、同じであれるかもしれないって……賢者様に教わった言葉を使って、そういう意味を込めて名付けたんだっけ。ああ……もう一度、お前の笑顔が見たいな……なぁ、ジェフィーラ……)


「――トレチェイス!!」


 その瞬間、上方じょうほうから一筋の光が差し込んでくる。驚いて彼と楓也が見上げると、そこには白竜の背に乗った夕鈴ゆうりの姿があった。彼女は目を細め、ふわりと優しく微笑ほほえんで言う。


「遅くなってごめんね、トレチェイス……それに青波くん(・・・・)も。むかえにきたよ!」

お読みいただき、ありがとうございます!

もし続きを読んでみようかなと思いましたら

ブックマーク、または下の★マークを1つでも

押していただけますとたいへん励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ