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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第213話 遺憾

「佳果さん、ちょっと失礼しますわね!」


 咄嗟とっさに、アーリアが幅跳はばとびの要領で彼に急接近した。衝突する直前、ひらりと背中側へ回り込んだ彼女は、佳果をかかえつつ慣性かんせいを利用してその場から離脱する。


 そうして地面に落ちた(コア)から、漆黒しっこくきりが立ちのぼっている。遠目とおめにもわかるその禍々しさは、世界悪意として立ちはだかったムンディを彷彿ほうふつとさせた。だが今回は直視しても精神汚染が起きるような気配けはいはなく、シムルがいぶかしがる。


「あれって瘴気しょうき、だよな? 上位魔神が最後の抵抗をしているのか……?」


「うーん、でもそれにしては濃度が低い気もしますよね」


「わたしもそんなに怖い感じ、しない。……超感覚制御のおかげかもしれないけど」


 零子やヴェリスの反応に、「まさか」と明虎に眼差しを向けるチャロ。


「あなた、これを見据みすえて動いていたのですか……?」


「……上位魔神がいずれ何らかの干渉かんしょうしてくることは火を見るより明らかだった。ゆえにその力の源泉を弱化じゃっかさせておこうというのは、至極しごく当然の発想だよ」


「!」


 "源泉"という言葉の意味を、楓也は即座そくざに理解する。彼が次元のはざまで、依帖えご煽動せんどうした魔神に対し『たいらげろ』と言ってガスをわせていたあの局面――思えばあれは、負の感情を世界へばらいている魔神のうちの一体を強制的に弱化することによって、"上"へのエネルギー供給きょうきゅうりょうを低減させたのだろう。ともすれば、その後『やりかたがわかった』と不気味に笑っていた明虎が、今日こんにちまで何をしていたのか察しがつく。


波來ならいさん、あなたは……今までずっと、そんな危険な活動を?」


「……"上"のこまとして動いている魔神は想像以上に多くてね。世界にはいまだ、君たちのような被害者が蔓延まんえんしているのが実情だ」


 彼はそう言って瘴気を射竦いすくめたあと、チャロを見て少しだけかなしそうな顔をした。


「結果、こうして私の近くにも……二人の愚か者が生まれることとなった」


「……明虎……」


「私が最もいけ好かないのはねぇ。負の感情を下々(しもじも)に集めさせ、みずからは上位次元を隠れみの胡座あぐらをかいている。そんな黒幕くろまくのやり方だよ」


 初めて本心をさらす明虎を、全員が息をんで見守る。


「現実世界でも同じこと。働く者がいるから社会は立ちゆく。しかるに権力を振りかざし、それをさも特権と言わんばかりに、不当な役割と運命を他者にいて、甘い汁をうだけの狼藉ろうぜき者……これをのさばらせて良い事情など、少なくとも私は知らない。そして何よりも――」


 彼はおもむろにチャロの頭へ手を乗せると、りんとした声で言った。


「君と夕鈴ゆうりの絆をもてあそんだこと。私ははなは遺憾いかんに思っている」


「っ……」


 明虎の行動理念が判明し、チャロは顔をせて肩を震わせる。その表情を確認せず、彼はゆっくり手を放すと、次は楓也に近づいていった。


「もぷ太くん」


「っ、はい!」


弱化じゃっかこそしたものの、あの瘴気は"真の勇気"だけで太刀たち打ちできるたぐいではない。別の切り口が必要になる」


「別の切り口……?」


「ああ。そしてそれはおそらく、夕鈴かのじょから愛珠あいしゅもらっている君にしかできないことだ。――いいかい、核の瘴気に触れ、中の空間(・・・・)にいるトレチェイスを発見するのだ。そこまでぎ着ければ、晴れてチェックメイトだよ」


「……! わ、わかりました!」 


 なぜか無条件に彼の言葉が信じられるようになった楓也は、そのまま佳果たちの方へ走ってゆく。


「さて、こちらは魔物たちに加勢するとしましょうか。ヴェリスさん、身体だけとなったアパダムーラをつのはあなたの仕事ですよ」


「わたし?」


「ええ。そのために今、強力なすけを呼びます」


 直後、瞬間移動を使って戻ってきた彼の横に、見知った人物が現れる。


「あっ、おばあちゃん!!」


「ヴェリスちゃん、皆様。よくぞここまで耐えしのんでくださいました。これより私が、アスターソウルに存在する全ての補助魔法をお掛けいたします。もう一息です、ともに頑張りましょう!」

お読みいただき、ありがとうございます!

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