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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第211話 合作

 零子によると、トレチェイスとアパダムーラの魂はあの赤い(コア)のなかに宿っているらしい。


「つーことは、とりあえず六角柱から核を取り出しちまえばいいのか?」


「ええ。ですが物理的に抜き取るだけでは両者を引きがせません。必要なのは、依り代としての霊的な領域にアクセスし、内側(・・)から乖離かいりさせること。そのためにはトレチェイスさんが心をひらき、ご自身の奥魔おうまと向き合うのが必須条件となります」


「心を……なるほど」


 チャロが確信を得た瞳で佳果を見つめる。アパダムーラから発せられる強い斥力せきりょくにより魂の透視とうしはばまれていた彼女は、ここまで相手あいてかたの真意が読み切れず手をこまねいていた。しかし零子のげんでおおよその事情が把握できた今、俄然がぜん、攻略の糸口が見えてくる。


「おそらくあれ(・・)の発動をもって、戦況はくつがえります。阿岸佳果、持っていますね?」


「ああ、こいつだろ」


 彼はふところから美しい宝石、太陽の雫を取り出した。


「……太陽神はこれまで、ここぞという場面でそれを媒介ばいかいに力を発揮はっきしてきました。しかしウーさんが最期さいごおっしゃっていた、"いびつな時"という言葉。わたし達が全滅の危機にひんしていたあの時に発動しなかったということは……」


「今この瞬間――"正しい時"ならばその場面がおとずれる。そういうわけですね?」


 楓也の確認に、大きくうなずくチャロ。皆の表情が引き締まってゆく。佳果は目を閉じてウーの顔を思い浮かべると、ひとつ深呼吸してから不動のアパダムーラをにらみつけた。


「んじゃ、早速あいつの核をいただくとするか!」


「では、此度も我らが先陣を切ろう。まずは各面を粉砕ふんさいして中の培養液をすべて抜く。その後の回収は貴様らに任せるが……見たところあの核、六角柱内で空間に固着(・・・・・)している様子ではないか? 力ずくでは取れぬような気もするが、どうするつもりだ」


「それについては私がなんとかしよう」


 突如、背後から明虎あきとらが現れた。パリヴィクシャたちが「誰だ?」と首をかしげる一方、騒然そうぜんとする陽だまりの風。チャロは彼を指さして、わなわなと言い放った。


「あ、あ、明虎!? あなた、今までいったいどこで何をして……」


「説明している時間はないよ、おろか者二号。君たちが作戦会議をしている間に、敵はこの世界における魂の分布(ぶんぷ)を解析し終えたようだ」


「魂の分布……? っ……まさか!」


 アパダムーラは通常モードをたもったまま、全ての突起物を重火器のように変えてエネルギーをチャージし始めた。その照準は佳果たち――いな、その後方こうほうにあるアスター城に向けられている。


「ほう、最も殺生(せっしょう)効率のよい場所を標的にしたか。……来るねぇ、"空劫くうごうほう"が」


「く、来るねぇって! またあなたは他人事ひとごとみたいに……!」


「大丈夫じゃよ、チャロ殿」


 一歩まえに出たガウラが、あらかじめ地面に書いておいた魔法陣に触れる。すると共鳴するかのごとく陣と彼の身体が光り、続けて唱えた固有スキル《ラクシャマナク》の障壁が、なんと"味方全体"に広がった。


「! んだこりゃ、すげぇな!」


「ヌハハ、驚いたかのう佳果! たとえどんな超必殺技が来ようとも、これならばビクともせんわい!」


 自慢気にサムズアップするガウラ。そんな彼を見て、明虎はひそかに思う。


(ふむ、対策を講じてきたのは上出来だ。しかしこれほどのき換え……果たしてどんな代償だいしょうを払ったのやら)


「……」


 その心の声を拾い、チャロは複雑な顔をした。

 つゆしらず、ガウラは皆をきつける。


「――このラクシャマナク弐式(にしき)はな。魔境にて長らく昌弥殿をまもってくれていた里長殿、またこの世界をえんの下から支えてくださっているフルーカ殿。そして誰よりも……陽だまりの風のため、裏で言葉ことばずくなに動いてくれていたウー殿との合作がっさくなんじゃよ」


 そう言って佳果の両肩をつかみ、震えながら彼は言う。


「……今のわしでは、これ以外で役に立つことはできぬ。じゃが精一杯、みなの想いを込めて構築したつもりじゃ。ゆえに、どうか……」


「ああ、わかってるぜガウラ」


「!」


「絶対に繋げてみせるさ。アレをしのいだあとのことは、俺に……俺たちに任せとけ」


 ニカっと笑った佳果が拳を突き出す。そこへ他の者たちも次々と参加し、拳の円陣が出来上がった。ガウラが「ありがとう、よろしく頼む」と言った次の瞬間、アパダムーラから弩級どきゅうの光線が放たれる。それを障壁が見事に防ぎ切ったのを皮切りとして、一同は核の奪取だっしゅに向けて動き出した。

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