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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第210話 本来の輝き

「はぁぁ!」


 ノーストが巨大な魔剣を片手で操り、疾風しっぷう怒濤どとうの連撃を繰り出している。重力を無視しているかのような速度で放たれるそれらの斬撃ざんげきには、全属性と無属性が合わさった死角なき攻撃魔法の付与に加え、一振りごとにくうかまいたちが発生し、敵を着実にけずってゆく。


「ォォオオオ!!」


 咆哮ほうこうし、超高速移動でいったん間合いを取ろうとする白竜。しかしノーストは転位魔法で後ろを取り、またよどみない太刀たちすじで剣撃のあらしを巻き起こした。しびれを切らした白竜は強引に反撃に転じるも、その神速しんそく爪牙そうがは魔剣によって受け止められてしまう。


「グルルルル!!」


 おそらくあの剣は、攻防時に生じる衝撃しょうげきをすべて魔力に変換しているのだろう。彼はそれを利用し、飛躍的な能力の向上を維持し続けている。永久機関を用いるとは、非常に厄介な相手だ。


「ふむ。うぬ、思考しているな」


「……」


「もし話が通じるならば好都合。このまま続けてもらちが明かぬだろう? われの攻撃は、そのたら硬度こうどうろこが邪魔をして決定打になり得ず。そしてうぬの攻撃もまた、こちらに届くことはない。まさに膠着こうちゃく状態といえよう」


「……」


「そこで提案するが、ここは一時休戦とゆかぬか。吾は決着なき闘争にきょうじている場合ではなくてな。……なに、うぬはそこで何もせずたたずんでいればよい。おとなしくしたがうならば、事が片付き次第、もとの次元へ帰してやるのもやぶさかでは――」


『……つけあがるな……小童こわっぱ


「!」


 不意に白竜から念話が発せられた。瞬間、タイムストップが発生し、これを認識できなかったノーストは敵の鉤爪かぎづめをまともに喰らって吹き飛ばされる。


「――ぬ!?」


 時が動き出すとともに、痛恨の一撃を浴びた彼は周囲の岩に叩きつけられ、血反吐ちへどをはいた。しかし意識と気力は失っていないため、すぐに治癒魔法をかけて体勢を立て直す。


(ぐっ……どういうことだ……予備動作がなく、寸陰すんいん余白よはくもない奇襲……傷口は魔境(あちら)で見た爪痕つめあとと同じようだが……つまり、実際に攻撃を受けたということか? 考えられるとすれば――)


 熟考しながら立ち上がるノースト。白竜はそんな彼を見下すように一瞥いちべつすると、あろうことか背を向けて翼を広げ、飛び去ろうとしている。


(この好機に離脱りだつだと……? あり得ぬ)


 敵の見せる不可解な挙動の数々。

 今は情報を引き出すべき時であると即断し、彼は叫んだ。


「おい、どこへ行くつもりだ! 吾はまだ倒れておらぬぞ!」 


『……お前の相手は後回あとまわしだ。おれは追わなければならぬ……追って、常闇とこやみはらわなければ……』


「常闇? うぬが"時間停止"を温存していたことと、何か関係があるのか!」


『……お前とて刹那せつなの闇……教える義理などない……』


 そう言って浮上を始める白竜。奴を呼び止めるために、最も効果的な言葉は何だろうか。ノーストは直感的に浮かんできたものを口にした。


「待て! うぬは、うぬは誠神(・・)なのか!? それとも魔神(・・)か!?」


『ええい……わずらわしい奴め……! 何を訳のわからぬことを――いや……誠神……魔神……? それは確か……』


 明らかに白竜の様子が変化する。ノーストは神妙な顔をして魔剣を納めると、彼の眼前まで飛行して懸命けんめいに呼びかけた。


「しっかりせよ! うぬは何者だ? その身体に宿やどっているけがれた魂……本来の輝きはどこへやった!?」


『穢れ……魂……輝き……おれは……こやつは……』



「ウーちゃん……」


 うつむく零子を見て、陽だまりの風だけでなくパリヴィクシャたちも悲嘆ひたんに暮れている。おそらくウーは、前に太陽神がおこなった時間軸移動と同じく――"正しい世界"に自分たちを連れてゆく目的で、己のエネルギーをこの瞬間の再構築についやしたものと思われる。


「……ここはまだ敵前てきぜんだ。あいつがくれた最後のチャンス、絶対無駄(むだ)にはできねぇ! 今はみんなで力を合わせて、作戦の立て直しに集中するぞ!」


 佳果の言葉に、全員がうなずく。現在アパダムーラはこちらを様子見しているフェーズである。まだ(コア)も破壊していないため、先と比べれば幾分いくぶんかは弱体化しているはずだ。殲滅せんめつモードに入る前の現段階で、攻略法を見つけなければ。


「皆様、聞いてください」


「? どうした零子さん」


「先ほどまでいた時空で、あたしはクァエレアによる標的の解析を完了させました。結果、アパダムーラの中にいるのはトレチェイスさんであると判明しています」


「ッ……それはまことか!?」


 驚くパリヴィクシャに、彼女は「ええ」と答えて続ける。


「そしてあの途方もない攻撃と防御の性能――あれはトレチェイスさんの魂にある奥魔おうまを、上位魔神が増幅させたものです。アパダムーラ自身も元々強力な魔獣のようですが……あの存在は、双方の闇が融合し、膨張ぼうちょうすることで生まれた無二の脅威」


「……ってことは姉ちゃん、もしかして」


「はい。あたし達のやるべきは……トレチェイスさんの魂を、アパダムーラの魂から引き剥がすことです!」

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