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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第208話 危機

「! いけない! 皆様、守りをかためて――」


 血相けっそうを変えたチャロがそう叫んだ瞬間、アパダムーラによる怒涛どとうの砲火が始まった。にわかに押し寄せる弾幕の荒波あらなみに、散開してなんとか第一波をやりすごす一同。しかし続いて襲ってきたのは、まるで生きているかのように追ってくるホーミング弾であった。


「くっ……!?」


 アクロバティックに動いて回避を試みる佳果。だがその弾速だんそくは明らかにこちらの敏捷性(AGI)を上回っており、とてもかわしきれそうにない。視界のはしでは、自分よりもさらに高速で攻撃をけ回っているヴェリスの姿が見受けられる。


(解析かいせき完了って……まさか俺らのステータスを……!? さっきまでのろかったのは、あいつも小手こて調べしてたってことかよ!!)


 ホーミング弾はそれぞれを、ちょう個々(ここ)の能力値ではさばけない程度のスピードをもって執拗しつように追い立てた。被弾を覚悟した佳果は、せめてダメージを最小限におさえるため、当たる直前に後ろ回し蹴りでそれの迎撃げいげきを試みる。結果、使った右足に激痛が走った。


「ッ!」


 爆風で飛ばされて地面に転がった彼は、苦悶くもんの表情で傷の状況を確認した。すると消し飛んだ右足部分の空間に、ノイズが発生している。


(……クイスに拷問ごうもんされた時の経験からして、このレベルのダメージは脳の負担がデカすぎてセーフティ(強制切断)が起きるはずだ。それがねぇってことは……)


 尊厳しかり、アパダムーラには星魂せいこん世界のことわりが適用されないのかもしれない。そして、プレイヤーにおける身体の欠損けっそんは現実世界に影響を及ぼさないと思われるが、NPC要素を持つ者たちについてはおそらく――。


「みんな……!!」


 サマーディの自動回復によって徐々に足の輪郭りんかくが戻り、なんとか立ち上がった佳果は、脂汗をかきながら辺りを見回した。あちこちで煙のかたまりただよっている。すると、その一つから無傷のヴェリスが飛び出した。


「うぁぁああ!!」


 アーリアから渡されたロケットペンダントが光っているところを見ると、魔法攻撃に対して無敵効果のある例の特殊スキルというやつでしのいだのだろう。だがあの正気しょうきを失った表情と、無謀むぼうにも単独で敵に突っ込んでゆく姿。彼は背筋をこおらせながら、薄れゆく煙のなかを再び見遣みやった。


「あ……」


 死屍しし累々(るいるい)の魔物たちと、負傷ふしょうにあえぐ仲間の声。目の前に広がる地獄絵図にり上がる情動を処理できないまま、マイオレム状態になったヴェリスの叫び声が聞こえてくる。


「みんなは逃げて!! わたしが引きつけるから!!」


 その一声いっせいですべての状況を理解した佳果の元へ、今度はシムルが現れる。


「! 無事だったかシムル!」


「ああ、おれは瞬間移動これが使えるから! でもすぐに手当てしないとまずい人もいるよ! 今はいったん、おれが全員ラムスに運んで――」


 彼がそう言いかけた刹那せつな。ザシュ、と嫌な音が聞こえた気がした。おそるおそる振り返ると、アパダムーラから生えた一本のつるぎに、ヴェリスがつらぬかれている。

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