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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第205話 冷静かつ大胆に

「っし! 気合い入れていくぞ」


 アスター城が最寄りの僻地へきち。そこにある"ひずみ"付近で待機している佳果は、両頬りょうほほをバシッと叩いてひとりごちた。そんな彼をリポップ直後の魔獣たちはこぞってにらみつけるが、いずれもただちに尻尾を巻いて逃げ去ってゆく。これは以前、シムルから貰ったフィラクタリウムのピアスによる効果だ。


(……今回の相手にも、この魔除まよけの効果は通用すんのかな? まあ、したところで好き勝手に泳がせるわけにはいかねーんだけどよ)


 屈伸くっしん伸脚しんきゃくをしながらそう考えていると、全体チャットへ連絡が入る。


ガウラ  「現状、A地点は異常なしじゃ!」

もぷ太  「B地点も変わりありません」

アーリア 「同じくC地点、オールグリーンです!」

和迩零子 「D地点、確認OKです。YOSHIKAさんのほうはいかがでしょう?」

YOSHIKA 「E地点も平和だぜ。とりあえず、チャロを出し抜いて急襲してくる

      ようなことはなかったみたいだな」

YURI    「ええ、さいわいにも。……では皆様、このまま合図あいずをお待ち下さい」


 一瞬、最後に表示されたユーザー名に驚いてしまったが、そういえば今のチャロは夕鈴のアバターに魂が定着している状態であった。生前の彼女が自分と同じくローマ字表記でプレイしていた事実を知り、佳果の緊張が少しほぐれる。



 いっぽうラムスでは、待機中のヴェリスが目を閉じて集中力を高めていた。その隣でシムルは深呼吸を繰り返し、ここからの段取りを脳内で復唱して、イメージトレーニングを重ねている。


(まず、実際に魔獣が現れた場所にいる人から、地点のアルファベットと数字が送られてくる。1は白竜、2は六角柱の魔獣。そしたらおれは2のほうへ、可能な限り手早てばやくみんなを瞬間移動で運ぶ。そして――)


われらは1へ転位魔法で移動、そこからはいよいよ実戦だな。……しかし)


 ノーストがシムルとヴェリスの様子を一瞥いちべつした。普段あまり物怖ものおじしない二人も、今回はさすがに大きなプレッシャーを感じているようで、表情はかたく、小刻みに震えているのがわかる。このままではろくに実力も発揮はっきできず、勝敗を運否うんぷ天賦てんぷに任せることになるだろう。彼はおもむろに、それぞれの肩へそっと手を置いた。


「よいかうぬら」


「ノーストさん……?」


「な、なに、ノースト」


「こういうのはな、どれだけ入念にゅうねんそなえようとも、たいてい予定どおりには運ばぬものなのだ。ゆえに吾は、はなから不測の事態を見越して構えている」


「……」「?」


「つまり、うぬらがかりにしくじろうとも、所詮しょせんは想定の範囲内に過ぎぬということだ。……肩の力を抜け。いっそ多少ハンデをくれてやるくらいの気概きがいのぞめ。このいくさには、失敗など補って余りあるほど、多くのつよき家族(・・)ひかえているのだから」


「!」「あ……」


 ノーストは後ろを振り返ると、パリヴィクシャを筆頭とする精鋭部隊にげきを飛ばした。


「……駄目押だめおしとゆこう。ものども、吾は一騎いっき討ちで白竜とケリをつけることにした! 敵をした後はすみやかに合流するゆえ、それまでのかん、うぬらには陽だまりの風の死守ししゅを命じる!」


御意ぎょいに!」


「!? で、でもノーストさん! いくらなんでも一人じゃ……!」


「一人ではないぞ。此奴こやつと一緒だ」


 そう言って魔剣をたずさえるノースト。その猛々(たけだけ)しい姿は、有無うむを言わさぬ絶対的な安心感を二人の心にもたらした。


「吾の心配は無用。……シムル、そしてヴェリスよ。冷静かつ大胆だいたんに、遺憾いかんなく勇気をふるえ。その魂の光をもって世界を照らし、心のままに導くのだ!」


「……わかった!」「ありがとう、ノースト!」


 彼の激励げきれいによって、震えがおさまっているのに気づく二人。その光景を遠目とおめに、ウーとチャロは互いに顔を見合わせてニッコリと微笑ほほえんだ。


 ――刹那せつな


「! 来ました、次元の揺らぎです!」

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