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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十二章 愛の因果律 ~掴みかけた夢~
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第203話 戦禍

《ぬう……あれら(・・・)を野に放つわけには――》


 次元のはざまで、翼がボロボロになったがらすが肩で息をしている。その横では、折れた槍を地面に突き立て、もたれ掛かる天使の姿があった。


《……私どもは最後のとりで。ここを突破されてしまえば、彼らが星魂せいこん世界に至るのは時間の問題となるでしょう》


《しかし如何いかんともしがたいぞ。百戦ひゃくせん錬磨れんまのわれらでさえ、あの熾烈しれつ応酬おうしゅうに巻き込まれぬよう立ち回るだけで手一杯ていっぱいだというのに》


 八咫烏の瞳には、激しく争いながらはざまを進む二対についの魔獣が映っていた。


 片や、水色の培養液で満たされた透明の六角ろっかくちゅうから、鉄骨てっこつをねじりしぼったような突起物が無数に飛び出ている謎の浮遊体。中心部には赤い(コア)があり、周囲には常に稲妻いなづまが走っている。液は複数の面から漏れ出しており、こぼれ落ちた先にあるものをすべて溶解ようかいさせ、更地さらちへと変えてゆく。さらに突起物は外敵が近づくと一瞬で兵器に変形し、無尽蔵の弾幕だんまくを張って迎撃げいげきしてくる。


(あちらは迂闊うかつに手を出せぬ。そして……)


 片や、巨大な光のを背後にたずさえた二足歩行型の白竜はくりゅうかまのような鉤爪かぎづめを持つ両腕を翼とともに広げているが、はね部分はジェット噴射ふんしゃのごとく高出力で放散ほうさんされるエネルギー粒子で成り立っているようで、目にもまらぬ速さの飛行を可能にしていた。


(こちらはそも、とらえることすら叶わぬか。……なぜこのような尋常ならざる魔獣がしのぎを削って進撃しんげきしている? 粒子精霊殿の報告では、上位の思惑おもわくが入り乱れているとのことだったが――)


《! 八咫烏殿、来ますよ!》


《くっ……奴の動力は底無そこなしか!》


 六角柱の魔獣がにわかに、上方じょうほう旋回せんかいする竜に向かって全ての突起物を重火器じゅうかきのように変え、照準を合わせた。まもなく撃たれた"くうごうほう"――その衝撃波はすさまじく、八咫烏と天使は互いに協力してバリアを張るが、いくらか威力を軽減しただけで無惨むざんにも破壊されてしまう。さらなるダメージをこうむり、両者が倒れ込むいっぽう。これを高速移動で巧みにかわした竜は反撃に転じた。


「ォォオオオ!!」


 うなるような咆哮ほうこうを伴って、神速しんそく爪牙そうがが襲う。砲撃ほうげきの反動で生じたすきわざわいしたのか、六角柱はすべもなく重火器ごと切り裂かれ、地面に墜落ついらくした。ところがすぐに赤い核が光り、まるで何事もなかったかのように再浮上する。その様子をしながら片目かためで観測した天使は、伝え聞いていたよりもはるかに危険度の高い彼らに戦慄せんりつしていた。


(もしや、あれらは……戦いのなかで成長しているのでしょうか? このままではあの世界が…………せめて、せめて情報だけでもお送りしなければ)


 天使が念話によってウーに状況を伝えるさなか。魔獣たちは次なる地を求めて、また規格外の攻防こうぼうをしつつ遠くへと消えていった。

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