第201話 古代魔法
「里長殿。実は折り入って、お頼み申したいことがあるんじゃ」
「ほう。某が力になれそうな話であれば、是非にでも」
「かたじけない」
相変わらずの即断と快諾っぷりに、感謝を述べるガウラ。彼は前座として、まず古代魔法の知識と適性を得た旨を明かすことにした。ただし書庫の存在はウーやフルーカによって口止めされているため、あえて伏せておく。
「彼の魔法は四次元以下のあらゆる現象を幾何学的に解析し、魔法陣に変換したものを術者の意図に沿って描き換え、本来とは異なる効果を発揮させるもの。例えば、壁抜けの効果しか持たぬ魔法に、空間歪曲を付加する。こうして編み出されたワームホールが、境滅結鬼というわけじゃな」
「! これは驚いた……まさかこの短期間で原理を修められていようとは」
「ヌハハ、色々と有り難い導きがあってのう! そして術者となるには、"根源の陣"を自らの目で確認する必要がある。これも故あって、既にクリアしておるぞい」
「根源の陣まで……もしや、もう片方の賢者とでも邂逅されたか?」
「ま、まあそんなところじゃわい。しかし二つほど問題が残ってしまった。原理がわかったところで、現象を魔法陣へ変換する方法、ならびに描き換えのやり方。肝心のこれらが、皆目見当もつかないんじゃよ」
「――なるほど、今のでそなたらの目的はおおよそわかった。だが、なぜに古代魔法の創造をお求めか? 申し訳ないが、返答によっては……」
「吾らは今、来たる死闘に備えて準備を進めている。これもその一環だ」
「死闘……?」
「ああ。事の発端から説明しよう」
◇
「星魂世界で、そのような危機が……」
ノーストたちの話を聞き終え、腕を組んで唸る刻宗。
(この魔境を生きる者たちにとって、あちらは救いの次元ともいうべき終着点。それが脅かされているというのなら……選択肢は一つ)
「如何じゃろうか、里長殿? ――このとおり、できれば力をお借りしたく」
深々と頭を下げるガウラに、刻宗は大きく首を縦に振った。
「相わかった。どうやら、賢者の立場としても看過できぬ事態が起こっている様子。微力ながら、某も助太刀させていただこう」
「! 恩に着るぞい!」
「……ふっ、交渉成立だな。では、ここから先はうぬらに任せるとしよう。吾は外へ出てくる」
「? どちらへ行かれるおつもりか?」
「なに、少しばかり地獄の上空で素振りをするだけだ。これの勘を取り戻さねばならないからな」
そう言って瞬時に魔剣を出現させ、柄を握りしめるノースト。堂に入ったその立ち姿に加えて、ビリビリと空気を伝わる隠しきれない覇者のオーラ。ガウラは思わず息を呑んだ。
「……それがお主の、本気のスタイルというわけか」
「ああ。うぬとはいずれ、これで鍔迫り合いをする日も来るだろう。期待しているぞ、ガウラよ」
不敵に笑った彼は、そのまま飛んでいってしまった。刻宗は呆気にとられている。
「そなた、よもやあの魔人殿と手合わせを?」
「フフ、約束したからのう。たとえ今は敵わなくとも、いつの日か必ず勝ってみせるぞい」
「……」
「それよりも、さっそく創造についてご教授いただきたいんじゃが」
「しょ、承知した。変換したい現象は?」
「うむ。わしの固有スキル、《ラクシャマナク》じゃ!」
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