第198話 権限
「……それで、フルーカ殿はそもそもどうやってこの場所に? ゲームマスター権限とはいったい?」
挨拶を済ませたガウラが質問を重ねる。彼はウーの導きでこの書庫まで来られたわけだが、見たところフルーカは誰も伴っていない様子だ。まさか自力で次元を超えたのだろうか。
「先に二つ目の質問からお答えいたしましょう。わたしはわたし自身の固有スキル、《ニスカーサ》を使ってここに来ました」
「固有スキル……? うーん、吾輩の知るかぎり、次元干渉できるスキルなんて仕様上存在しないはずなんだけどにゃあ」
二本足で立ち、腕を組むウー猫。その愛らしい姿に、フルーカが微笑する。
「ええ、それは精霊様の仰るとおりです。わたしのスキルは元々、アスターソウルにおける"ヘルプ"で参照できる項目を大幅に増やす、という効果を持っていただけにすぎません。当然、それ自体に次元へ干渉する力などはございませんでした」
(ヘルプ項目の拡張――つまりあの世界の理を、誰よりも詳しく調べられたわけじゃな。……ある意味、最強のスキルと言えるかもしれぬのう)
ガウラが考察するなか、フルーカは続けた。
「しかし……明虎さんや、彼が縁を結んでいる神仏と改めて協力関係を築いた日のことです。わたしはいつものように、調べものをするためにニスカーサを使いました。すると聞き慣れた音声ガイドではなく、まったく知らない声色で、突如『汝へ管理者権限を一部譲渡する』と言い渡されたのです」
「! それは……!」
(ふむ。ユウちゃんが亡くなったあと、ヘルプの自動音声は"世界の光"領域を後任することになったチャロがやりくりしていたはず。そのタイミングで両者を遮るように介入が起こり、管理者権限を持ち出したということは――)
「以降、ニスカーサの説明欄には"ゲームマスター権限を行使できる"という一文が追記され、わたしはこの書庫へ自由に出入りできるようになった次第です。あの端末の操作やロックも可能です」
「……フルーカ殿。その権限を譲渡した存在とは、もしや」
「ええ、声の主はおそらく……太陽神様。誠神は基本的に自ら名乗ったりしませんので憶測になりますが、状況的にそう捉えるのが妥当でしょう」
諸事情で短めの回になりました。
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