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魂が能力になるVRMMO『アスターソウル』で死んだ幼馴染と再会したらAIだった件  作者:
第十一章 岐路へ立つ魂 ~決意の果てに~
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第192話 凶報

「……で。そんなところでお二方ふたかたは一体なにをしているのですか? 中にも入らずにコソコソと」


 不意にチャロが窓を開け放ち、外壁がいへきに寄りかかっていたノーストとガウラをジト目で見る。一斉いっせいに視線が集まり、彼らはバツが悪そうに部屋へ入ってきた。


「いや~なんというか……登場するタイミングを失ってしまってのう。立ち聞きするつもりなんて無かったんじゃが、大切な話の腰を折るのも気が引けたゆえ」


「右に同じだ」


「かか、なんだよ今さら。二人だって家族なんだぜ? たなら遠慮しないで堂々と入ってくりゃいいのによ」


「! ヌハハ、すまぬ佳果」


「……しかし、こんな夜更よふけにつどって如何いかなる議論をしているのかと思えば……よもや全員がけつみゃくにあるなどという、突拍子とっぴょうしのない"真実"に辿り着いていようとはな。われらもまた、丁度ちょうどそれを聞き及んできたところだったのだが」


「真実……? あれ、というかガウラはまだクールタイム中のはずだよね。ラクシャマナクなしで、どうやって戻ってきたの?」 


「うむ、実はのう」


 楓也の問いに、ガウラは真剣な表情になって語り始めた。



 少し前、魔境の結界付近にて。

 調査がどん詰まりとなり、夕鈴たちの捜索をいったん打ち切ったガウラとノーストは、ひとまず下山しようときびすを返した。ところが急に結界内の門が重低音を立てて開いたかと思えば、中からムンディが出てくるではないか。どうやら彼はこちらに気づいているらしく、こっちへ来いと言わんばかりに手招きしている。


「……あの骸骨がいこつ殿は、もしや」


「ああ、例の魔神ましんだな。しかしあやつ、何を考えているのだ? 結界がある限り、吾らは近づけぬ――」


 ノーストがそう言った刹那せつな、二人の視界が瞬時に切り替わる。驚いて周囲を確認すると、目と鼻の先にムンディがいた。今しがた立っていたはずの場所は遠くのほうに見える。


「な、なんと!?」


《よお、お疲れさん》


「……何の真似まねだ魔神。どうやったのかは知らぬが、結界を無視して吾らを引き入れるなど、うぬらのかかげている大層たいそうな制約を反故ほごにするのではないか?」


《あーそこはあれだ。俺様もちょっと、チャロ(ガキンチョ)見倣みならってみようかなと思ったんだよ。ビバ職権濫用(らんよう)! ってな。クク》


 うわさたがわぬ道化どうけっぷりのムンディ。ガウラは彼に奇妙な痛快つうかいさを感じると同時に、初見しょけんだからなのか、どこか得体の知れない恐怖も感じた。いっぽうノーストは、あきれ顔でため息をつくばかりだ。


《悪いが自己紹介ははぶかせてもらうぜ。……ガウラボーイ、取り急ぎあんたには、次元のはざま経由で向こうに帰還きかんしてもらいたい。ウーに箱舟はこぶねを用意させてあるから、それに乗って早急さっきゅうにな。ああ、エンジンについては俺様がなんとかしたから心配いらないぞ》


「ふ、ふむ? 魔神の立場にあられる貴殿きでん直々(じきじき)にそこまで根回ねまわししているということは……あちらで何か緊急事態でも発生しているのかのう? しかし、何故なぜわしなんじゃ」


《おっ、かんがいいな。まあ詳しくは飛行中に念話で話すから、とりあえず中に入って箱舟に乗ってくれ。当然ノーストもだぞ? あんたはあんたで、重要な仕事がある》



 その後、箱舟のなかでまず最初にムンディから聞かされた説明はこうだ。

 結界崩壊(ほうかい)の当時、不安定だった時空に付け込み、裏で夕鈴たちの魂を喰らった魔獣をこの次元のはざまへ差遣さけんしたとおぼしき、彼の"上"に当たる存在。その狙いはおそらく、彼女の転生(・・)を阻止するためだったのだという。


《魔境において、最終的に愛珠あいしゅ探求の道を選び、"果て"――つまり結界を越えてあの門へ至った者の魂はな。俺様が"法廷ほうてい"って場所に連れていくことになってるんだよ。で、そこで下された沙汰さたと当人の希望次第ではあるんだが……基本的に、さばきを終えた魂は霊界って次元へ進んで、現実世界に転生するための準備に入るか、場合によっちゃアスターソウルのNPCに宿ったりするようになってる。これに関して、夕鈴ガールが後者を狙いに来てたのはほぼ確定的だと調べを付けた上で、俺様はあんたらと接触している。……まくし立てたが、ここまではいいか?》


「法廷……うぬら、そのようなことまで担っていたのか。ではもしや、ヴェリス(あの娘)シムル(小僧)チャロ(小娘)も……」


《あ、誤解するなよ。あくまで今のは地獄や魔境を経由した魂が辿る転生の流れだ。はなから霊界にいる奴らとは手順も担当も違うし、例外もある。まあ輪廻りんね円環えんかんにいるって意味だけめば、同じことかもしれないけどな》


(輪廻転生……! ヴェリスの素性を聞いていた手前、別段(べつだん)疑っていたわけでもないが……まさか実在していたとは。たまげたわい)


《……ま、そんな"真実"はさておきだ。逆に考えると、ひとつ見えてくることがある。夕鈴ガールは俺様の上司にとって、アスターソウルに転生されると何かがまずい(・・・・・・)存在だった。状況から見て、これは間違いない》


「何か……とな?」


《おう。ぶっちゃけ仔細しさいは俺様にもわかりねる。ただはっきりしてるのは、上司が手ずからこの次元を送り込んだ二体の魔獣――そいつらは現在、天使や精霊の包囲網ほういもうを突破しつつ、アスターソウルに向かってはざまを進行中ということだ》


「な、なんだと!?」


《奴らはいずれも魔境産、しかも上司の思惑おもわく背負せおって使役しえきされた特殊個体。……向こうのプレイヤーで勝てるやつ、いると思うか?》


「!! ……なんということじゃ……」


 ムンディの話が本当ならば、アスターソウルは未曾有みぞうの危機におちいるだろう。そして生まれる悲劇と()。天災に関わる上位魔神が出張っている以上、その余波はいずれ現実世界にすら影響を及ぼすかもしれない。何としても対処しなければ。


《しかし幸い、さっき受けた報告ではまだ数日くらいは足止めできる算段が整っている。だからあんたらはその間に、可能な限り戦力を集めてなるべく被害を――人間たちの負の感情が爆発しないように尽力しろ。……ちなみに俺様たちは斥力せきりょくの関係で、向こうの世界では武力行使ができない。だからノースト、今回は守護魔としての力を取り戻したお前がかなめだぞ》


「っ……心得こころえた」


《んでガウラボーイ。あんたは夕鈴ガールのこと、そして俺様がいま話したことを急いで陽だまりの風へ伝えてくれ。……その結果あんたらがどういう結論を出したとしても、神々は決してとがめたりしないと俺様がここで保証しておく。だからあせらず、でも迅速に議論を頼むぜ》


「……合点がってん承知!」


《あとな。この件、明らかに因果が不正操作された形跡も見つかってるんだ。もはや魔神とか誠神せいしんとか関係ないくらい、ヤバい事態が起きてるといっても過言じゃない。……俺様はあんたらが頑張っているすき黒龍こくりゅうってやつと打開策を用意するから、それまで何とか持ちこたえてくれ》

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